田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 自民党の石破茂元幹事長が9月の総裁選への立候補を表明した。今の政治情勢では、自民党総裁がそのまま日本の総理大臣になるだろうから、筆者も含めて、総裁選の動向からやはり目が離せない。

 もちろん、現状で石破氏が勝利する確率はそれほど高くはない。地方票で圧勝するような展開でもないと、国会議員票の劣勢を覆すことは難しいだろう。だが、それでも石破氏の政治的意欲は強く、立候補表明以降、積極的にメディアで発言を繰り返している。

 ところで、その政治的な意欲は果たして中身を伴ったものかというと、話は別である。石破氏の総裁選特設ホームページや、7月に出版した『政策至上主義』(新潮新書)、さらに立候補以後のインタビューなどを読んだ限りで言えば、筆者の主な関心である経済問題に絞っても、具体性に欠け、ペラペラな印象を強く抱かせる主張しか読み取ることができない。

 特に石破氏が、ワイドショー向きと形容したくなる印象論を、そのまま売りにしていることが目立つ。なんといっても、一番の売りが「正直で公正な政治」を目指すことだそうである。

 TBSの番組に出たときも、石破氏は政府が嘘をつかない、信頼回復を目指すという点を強調していた。もちろん、このような道徳の教科書のような発言を繰り返しているのは、森友・加計学園での国民の「疑惑」を受けてのものだろう。

 筆者は、以前から森友・加計学園問題に関して、安倍晋三首相や昭恵夫人には全く責任がない、と主張し続けている。つまり、政治家やマスコミ、識者たちといった反安倍的な勢力が生み出した「冤罪(えんざい)」に似たものだと思っている。いわば、現代版「魔女狩り」である。
2018年8月、自民党総裁選への立候補を正式表明する石破元幹事長
2018年8月、自民党総裁選への立候補を正式表明する石破元幹事長
 テレビ報道は、善悪の二元論を採用して、視聴者に分かりやすい構図を作る。それが最も視聴者の受けがいいからだ。その二元論では、政府は常に悪の化身であり、悪の化身の代表として安倍首相が位置づけられている。

 これは実にワイドショー的で、善悪はっきりした構図として採用しやすい。筆者はこのようなワイドショー的報道と、それに伴う森友・加計学園問題の異常な騒ぎに対し、1年以上批判を繰り返してきた。まさに悪い意味での大衆迎合主義の極致である。