確かに、ワイドショーが大衆に迎合するのは、視聴率などを考えれば、ある程度は仕方がないかもしれない。しかし、一国の重責を担う総理大臣になる資格を得るだろう自民党総裁にふさわしいだろうか。

 答えは書くまでもなく、ノーだろう。そんな悪い意味での大衆迎合にくみするのであれば、政治家としての見識を疑ってしまう。ただ、それで説得される国民も多そうなので、むしろ、国民の側の見識こそ問われるのかもしれない。

 それでは、石破氏の経済政策について見ておきたい。金融政策については、すでに別の論説でも厳しく批判したが、石破氏はアベノミクス、特に金融緩和政策について否定的な見解である。

 アベノミクスは円安や株価の上昇で企業業績を改善したが、企業の売り上げも人々の所得(実質賃金)も増加していない、と石破氏は批判している。さらに、現状の雇用改善が、高齢化を反映した構造的な人手不足の結果生じたものであり、アベノミクスの成果とはいえない、というものだ。

 なんだか、与党議員の発言というよりも、野党側からしばしば聞くアベノミクス批判に似ている。まず、高齢者の退職などで人手が不足しているという見解は、単に雇用の実態を理解していない誤解である。

 高齢者の退職などによる生産年齢人口の減少は、安倍政権以前から続いている。むしろ、働き場がなく就職を諦めることで、かえって失業率が低下するという、地獄のような現象があった。

2018年4月、漫画「ドラゴンボール」に登場する
キャラクター「魔人ブウ」に扮した自民党の石破茂元幹事長
(鳥取マガジン提供)
 だが、アベノミクス採用以後は、就職を諦めていた人たちが働ける場所を見つけることが可能となり、多くの若者や「失われた世代」と言われた人たちが、新たに正規雇用などに転換できている。

 残念ながら、このような認識を石破氏は持っていない。まさに生活の基礎である働く場に対する認識がないのだろう。

 ちなみに経済全体の売上高は大きく増加しているし、また(名目・実質)賃金の上昇トレンドも明瞭になってきている。ちなみに、先ほどのように、働き場がなく就職を断念する人が多く、失業率「低下」も見られる中で、実質賃金が上昇することがある。これは単にデフレを伴う不況のときに見られる現象である。つまり、実質賃金の上昇を重視する見解は、経済の実態を無視する傾向が強く、偏った見解になりがちである。