ところで、石破氏の財政政策や社会保障に関する見解も、問題にすべき点がある。その象徴が消費増税を巡る立場である。まず、消費が現状で伸びていないという石破氏の指摘は、2014年4月に税率が8%に拡大した消費増税の影響により、急激な落ち込みからいまだ回復していないからだ。消費増税は、恒常的な影響を消費に及ぼしているのである。

 ちなみに、消費増税直前の13年、個人消費は極めて高い水準で上昇していた。だが、石破氏は近著で「消費が伸びないのは、『人生100年リスク』のせいだ」と指摘している。つまり、社会保障が充実していないせいで将来不安を抱えるから、消費が伸びないというのだ。

 実はこの理屈、消費増税をしたい人たちに共通している。では、果たして14年の増税後に将来不安が解消して、消費が回復しただろうか。その点への石破氏の反省が見られない。

 それどころか、「反省」を違った側面に求めているようだ。石破氏によれば「税と社会保障の一体改革」に問題があったという。一つは、消費増税がもたらす政治的リスクであり、もう一つは社会保障給付が多様なものかどうかを巡るものである。

 ただ、後者の多様性に欠けるかどうかの具体的な議論を、石破氏が主張しているようには思えない。実際に、石破氏は近著で国民にその選択を任せている。しかし、それでは政治的リーダーシップというものを、石破氏はどう考えているのだろうか。

 自分よりも国民の方が賢明な選択をするというのならば、それは一つの見識かもしれない。だが、消費増税が政権交代などの政治的リスクをもたらすという点だけを問題視するのはどんなものだろうか。

 むしろ、消費増税の問題というのは、低所得者層がさらに苦しい生活を強いられる可能性、さらには経済全体の不安定化に原因があるだろう。石破氏が、本当に国民1人当たりの国内総生産(GDP)の改善を目指すのであれば、まずは消費増税の凍結か減税を行って、経済を安定化することが最優先ではないだろうか。
2018年03月、衆院本会議に臨む自民党の石破茂元幹事長(右)と小泉進次郎筆頭副幹事長(斎藤良雄撮影)
2018年03月、衆院本会議に臨む自民党の石破茂元幹事長(右)と小泉進次郎筆頭副幹事長(斎藤良雄撮影)
 だが、そのような発想は石破氏にはない。公平に言えば、安倍首相も、来年の消費増税についてはそのような立場を採用してはいない。

 両者の違いといえば、今のところ消費増税と金融緩和政策の効果ぐらいだろう。安倍首相は過去に消費増税を1回実施し、2回先送りし、石破氏は今書いたように増税派が好む「将来不安解消論」を採用している。