金融緩和政策の効果に関しても、安倍首相は積極推進派だが、石破氏は、緩和政策が国民の生活を改善するものとは見なしていない。要するに、金融緩和に否定的、そして政治リスクには注目するが経済的リスクを軽視している点で、緊縮政策側の「住人」であると言っていい。

 ただ、石破氏には、積極的な財政政策を唱えているように見える点もある。財政政策はいたずらに拡大するのではなく、有意義なものをつくるべきだ、という主張だ。

 だが、それは具体性を著しく欠けたものに映る。むしろ、今まで政府支出全体を削減(当然それは現在の経済状況を不安定化させる)してきた構造改革主義的な理屈に近い響きを持つ。いずれにせよ、具体像が少しも見えないのである。

 こうして石破氏の主張を検証していると、ペラペラの中身にややげんなりしてきた。金融緩和を積極的に唱え、また財政政策も新しい提案を積極的に行っている金子洋一前参院議員の方がはるかに充実している。では、最後に金子氏の財政政策の具体的な提案を見ておこう。

 もちろん金子氏は消費増税に反対である。その上で、積極的な財政政策として英労働党の政策である「公的ファンド」方式を採用して次のような主張を行っている。

 総額50兆円以上のファンドを創設。教育・子育ての無償化をはじめ、次世代エネルギー開発、現状でも混雑・不足しているインフラ整備を大胆拡充するなど、わが国経済の将来の成長を促すための投資ともいうべき政府支出を増やします。教育や長期的な基礎研究、技術革新を促すといったことは、長い目で見れば必要なことですが、短期的に採算が合わないため民間にはリスクが大きすぎます。民間がやれないからこそ政府の出番です。 このファンドは現在の歴史的な低金利を利用し、超長期国債を原資の中心とした国債の追加発行でまかないます。


 今の日本経済の状況に応える素晴らしい提案だろう。正直かつ公平にいえば、石破氏にはこのような具体的なビジョンはない。また、安倍首相にも今のところ、そのような積極的な財政政策の姿勢は見られない。
2016年6月、閣議に臨む安倍晋三首相(左)と石破茂地方創生担当相(斎藤良雄撮影)
2016年6月、閣議に臨む安倍晋三首相(左)と石破茂地方創生担当相(斎藤良雄撮影)
 このままでは、単なるワイドショー的な「印象報道」の餌でしかなくなるだろう。経済、国民の暮らしが本当の論点にならないのである。ここに事実上の総理大臣の選択である、自民党総裁選の不毛さが現れているのである。