川上祐司(帝京大経済学部准教授)

 日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題や、日本ボクシング連盟の不祥事が朝日新聞の紙面を飾る。記事では、わが国のアマチュアスポーツ界を取り巻く問題を鋭く論じている。その隣を見ると、同紙主催の「夏の甲子園」全国高校野球選手権大会の「告知」を大きく宣伝している。

 筆者はこのコントラストにどうしても違和感を覚えてしまう。炎天下の中、勝ち進むにつれて連投を余儀なくされる超過密日程は、高校生にとって過酷すぎる大会である。

 今大会でも、済美(愛媛)の山口直哉投手が延長十三回を投げきったが、1人の投手が200球近く投げ抜いて、体に負担がかからないわけがない。これでは「勝利至上主義」と言われても仕方ない。

 しかし、この事実を隠蔽(いんぺい)するかの如く『本気の夏、100回目。ありがとう これからも』をキャッチコピーに、アイドルによるPRや球界のレジェンドを起用した始球式、過去の名シーンを伝説のように紹介するありさまだ。

 歴史ある甲子園大会へのあこがれは強いだろうが、そもそも中学校の野球部では軟式ボールを使用するため「本気」で甲子園を目指す子供たちは野球部に所属しないことが多い。

 ゆえに、かつて巨人軍の練習場だった多摩川グラウンドは、今や週末になると硬式ボールを使用するリトル・シニアリーグのチームに所属する中学生たちが練習に励む。そしてグラウンドには常に甲子園常連校の監督やコーチが視察に訪れ、金の卵たちの姿を追っている。

 また、高校にとって、甲子園出場は、進学率向上と出願者の獲得に高い効果が期待される。そのためか、近年では、各校のユニホームの学校名表記に工夫を凝らしており、漢字で大きく記されている出場校が増えている。100回大会の出場校は過去最多の56校だが、そのうち大きく漢字で学校名を記した高校は22校に及ぶ。しかも1校を除いて全て私立高校である。
2回戦の星稜(石川)戦で、済美(愛媛)先発の山口直哉投手は延長13回184球を一人で投げきった=2018年8月12日、甲子園球場(林俊志撮影)
2回戦の星稜(石川)戦で、済美(愛媛)先発の山口直哉投手は延長13回184球を1人で投げきった=2018年8月12日、甲子園球場(林俊志撮影)
 ローマ字表記でも、これまでよりも一回りも二回りも大きくした高校が6校あり、4校が私立高であった。校名は連日全国ネットで生中継されるテレビでも十分に認識することができるから、経済効果は計り知れない。

 その一方で、地方大会で優勝し、代表の座を勝ち得た場合の経済的負担はどれぐらいだろうか。まず、主催者の朝日新聞社が発表した昨年の大会収支決算を見てみよう。