山本佳奈(医療ガバナンス研究所内科医・研究員)
 
 東京医科大が女子受験生を一律減点し、恣意(しい)的操作を行っていたことが発覚した。裏口入学に続いて、あきれた実態が続々と明らかになっている。前代未聞の不祥事であり、海外でも報道され注目を集めている。

 新聞報道によれば、2010年の医学科一般入試において、女子の合格者数が全体の38%に達したため、2011年頃から女子受験生を一律に減点し、女子の合格者数を3割に前後に抑えていたという。

 その理由として、女子は結婚や出産で医師を辞めるケースが多いことや、緊急手術が多く勤務体系が不規則な外科系の診療科では「女3人で男1人分」と、出産や子育てを経験する女性医師は男性医師ほど働けないことを挙げていた。系列の病院で勤務する医局員不足を懸念しての「必要悪」であり、「暗黙の了解」であったという。

 報道の翌日、勤務先の病院の女性医師の医局部屋では、この話で持ち切りだった。「女子だからって減点するなんてひどい」「子育てしながら働いているのに」「女医が辞めざるを得ない環境を改善することが大事なのに」「某私大もそうみたいよね」などと議論は尽きなかった。

 一般的に女子の方が男子に比べて優秀な受験生が多く、普通に試験をするとどうしても女子が多くなるという。どうしても男性の方が多く欲しいのであれば、良いか悪いかは置いておくとして、募集要項に男女各々の募集人数を堂々と書けばいい。受験生は、その募集要項に従うしか選択肢はないのだから。どうして、水面下でコソコソと女子だけ不利に扱うのだろう。
不正入試問題の内部調査報告を受けて記者会見に臨む東京医科大の行岡哲男常務理事(左)ら2018年8月7日、東京都内のホテル(斎藤良雄撮影)
不正入試問題の内部調査報告を受けて記者会見に臨む東京医科大の行岡哲男常務理事(左)ら2018年8月7日、東京都内のホテル(斎藤良雄撮影)
 私自身、医師になりたい一心で受験勉強をしてきた。高校1年の夏、医師を夢見て勉強を始めた。同時に、思春期真っ盛りだった私は、体型を気にしてダイエットを始めた。いつの間にか、摂食障害に陥っていた。1年半後のある日、「明日死んでしまうよ」と私は医師から宣告された。摂食障害を克服できたのは、医師になりたいという強い思いだった。それを支えてくれたのは、高校の担任教諭であり、両親だった。

 一浪し、なんとかつかんだ医学部合格だった。予備校時代、多浪するほど医学部に入りにくくなる、なんて噂は聞いたことがあったが、医学部入試で女子差別がされているとは夢にも思っていなかった。今もそうだが、私が受験生だった時も、国公立のほとんどの医学部で男子の合格者数の方が女子よりも多かった。

 この事実について、私自身まったく疑問を持っていなかった。というのも、生まれ育った関西には、中学入試で偏差値の高い私立男子校が大阪や京都、神戸、奈良に何校もある。一方で、女子校や共学は少なかったからだ。中高の教育レベルが、医学部の合格者数に比例するのだろうと勝手に思っていた。女子差別の実態があると知っていたら、それでも私は医師を目指していたのだろうか。