早見直美(大阪市立大講師)

 ダイエットは日本をはじめ、多くの国で常に人々の関心事であり、若い女性を中心にダイエットを取り巻くさまざまな情報に翻弄されている。2018年2月ごろにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題となった「シンデレラ体重」もまた、若い女性を中心とした「やせたい」気持ちが投影された理想体重の一つである。

 シンデレラ体重は、身長(メートル)×身長(メートル)×20×0・9という計算式で算出されるという。通常、標準体重を算出する際に使用するのは、最も死亡率や病気の罹患(りかん)率が低いとされる体格指数(BMI)=22を基準とした身長(メートル)×身長(メートル)×22である。

 そのため、仮に身長160センチの女性の場合、標準体重は1・6×1・6×22=56・3キロであるのに対し、シンデレラ体重は1・6×1・6×20×0・9=46・1キロとなり、健康的な標準体重からすると、その差は歴然としている。

 シンデレラ体重はBMIでいう18を基準とした体重であり、この体重になった場合、BMI18・5未満の「やせ」に分類される。若い女性がやせになると、貧血や月経不順、ホルモンバランスの乱れ、免疫力の低下、骨粗鬆(こつそしょう)症、低出生体重児の出産など、さまざまな健康障害につながることが危惧される。

 また、シンデレラ体重に近づこうとして無理なダイエットを続けた結果、摂食障害を発症するリスクも高く、決して推奨されるものではない。

 シンデレラ体重をいつ、誰が提唱したかについては、エステティック業界やメディアによるものではないかなど諸説あるが、定かではない。しかし、シンデレラ体重は今に始まった話ではなく、これまでも何度か話題になったようである。

 また、名前は違えど、美容体重、モデル体重など、標準体重よりもさらに軽い、女性が憧れる体重の指標は以前より話題になってきている。今回、シンデレラ体重が改めて話題になったのは、このシンデレラという響き、シンデレラのように夢をかなえることができるのではという、ある種、自身の願望を投影させるようなネーミングが、改めてSNS世代の若い女性の心をつかんだのかもしれない。

 やせ願望は日本人に限らず、多くの女性が抱くものである。しかし、実際の体形を考えると、日本人の20代女性のうち20・7%がすでにやせに分類される。これは先進国において非常に高い割合であり、肥満が健康課題となる他国とは状況が異なる。
(ゲッティイメージズ)
(ゲッティイメージズ)
 3月末に国立青少年教育振興機構が報告した高校生対象の国際比較調査によれば、日本の高校生はBMIの判定で普通体重の割合が7割を超え、比較した米国・中国・韓国より高かった。それにもかかわらず、女子の半数以上が「太っている」「少し太っている」と感じており、この割合も日本が最も高かった。さらに、自身の体形に「満足している」「まあ満足している」女子の割合は2割強にとどまり、4カ国の中で最も低かったことが報告されている。

 ではなぜ、日本の若年女性はこうもやせたがるのだろうか。体形に関する認識や感情に影響を与える要因の一つに、自己肯定感がある。かねてより自己肯定感が低いことはやせ願望や危険なダイエット行動にかかわっていることが指摘されており、先の調査においても、日本の高校生は他国と比較して自己肯定感が最も低かったことから、その関連性がうかがえる。

 思春期以降、体形の変化を経験する中で、他者からどう見られているかを気にするようになり、人と違うことへの不安が募りやすい。異性への関心の高まる年代であることからも、見た目を重視するようになる。