山田順(ジャーナリスト)

 「組織は必ず肥大化し、本来の目的とは違ったものになっていく」。今のNHKを見ていると、そう思わざるをえない。

 先月、総務省の有識者検討会が、NHKが2019年度に開始を計画しているテレビ放送のインターネット常時同時配信を容認するとしたことで今、ネットを中心に騒ぎが広がっている。

 これはPCやスマートフォンを持っているだけで受信料を取られるということだから、「おかしいじゃないか」という声が上がるのもうなずける。「もうこうなったらいい加減に民営化しろ」「スクランブルを導入したらどうだ」などという声も拡散している。

 そもそもNHKができた当時は、ラジオしかなかった。その後テレビができたが、そこまでは「放送」だったから、テレビ受信機があれば契約によって受信料を徴収するというのは、ルールとしては理にかなっていた。

 なにしろ、たった一つの「公共放送」であり、国民のために全国あまねく必要なニュースや情報、知識、教養、娯楽を届けるのがNHKの使命だったからだ。それに対して、国民がコストを負担するのはやむを得なかった。

 しかし、時代は変わった。ネットができて、それが進展して放送と通信は融合した。情報は誰でも発信できるようになり、双方向となってソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が登場し、メディアは多様化した。

 となるとNHKは、テレビ放送だけやっていては、メディアとして遅れた存在になる。ネット進出は、新聞も民放もやっているのだから、NHKも当然の行動として進出した。しかし、問題は受信料である。これをテレビ受像機以外に拡大して徴収できるのか。
2018年6月、東京・渋谷駅前で、携帯電話のワンセグ放送で試合を見るサッカーファン(今野顕撮影)
2018年6月、東京・渋谷駅前で、携帯電話のワンセグ放送で試合を見るサッカーファン(今野顕撮影)
 なんとできると、6月に裁判所は判断したのである。ワンセグ機能付きの携帯電話を持っている場合も受信料を払う義務があるのかどうか争われた裁判で、東京高裁は「受信契約を結ぶ必要がある」と判決を下した。よって、今回のネット同時配信解禁による受信料徴収は、当然の帰結と言えるだろう。

 今や日本人のほとんどが、ネット接続端末を持っている。博報堂DYメディアパートナーズの「メディア定点調査2018」によれば、スマホの普及率は全世代で79・4%である。となれば、どう見ても、これによってNHKの受信料収入はアップするだろう。