藤井靖(明星大心理学部准教授、臨床心理士)

 インドネシアのジャカルタで開催されているアジア大会に出場していたバスケットボール男子日本代表4選手が代表認定を取り消され、8月20日に帰国した。当該の4選手は、日本代表の公式ウエアを着用した上で市内の歓楽街を訪れ、買春行為に及んだことが問題となった。

 日本バスケットボール協会(JBA)は、選手の帰国当日に東京都内で記者会見を行い、永吉佑也、佐藤卓磨、橋本拓哉、今村佳太の4選手とともに謝罪した。また、日本選手団の山下泰裕団長は、現地ジャカルタで同日会見を行い、買春行為があったことを認めつつ、遺憾の意を表した。さらに各競技の指導陣に対して、規範順守と再発防止を伝達した。

 今回の一件では、JBAの三屋裕子会長をはじめ、管理者として責任を担う幹部の判断は、危機管理として迅速に先手を打った印象が強い。つまり、選手ら本人をも率直に世間にさらすことによって、イニシアチブを取ったのである。

 これは、報道する側のマスコミとの関係性や世論をコントロールして、アジア大会の盛り上がりに水を差したり、他の競技に参加している選手に余計な雑音を与えないようにしたりする意図に他ならないだろう。

 これは結果的には、三屋会長が言及していたような、当該の選手が「自力で立ち直る」ための近道になる可能性がある。なぜならば、現在のところ傷口は最小限に抑えられていると考えられるからだ。

 いくつかのポイントがある。まず、今回の一連の動きは、今年起こったその他のスポーツにまつわる不祥事に比べて、今回の問題の中心にいる選手が世間に顔をさらし、自らの言葉で謝罪するまでの時間が非常に短い。ここに、心理学でいう「ギャップ効果」が生じる。
2018年8月、会見の冒頭、頭を下げる(左から)永吉佑也、橋本拓哉、日本バスケットボール協会の三屋裕子会長、東野智弥技術委員長、佐藤卓磨、今村佳太(川口良介撮影)
2018年8月、会見の冒頭、頭を下げる(左から)永吉佑也、橋本拓哉、日本バスケットボール協会の三屋裕子会長、東野智弥技術委員長、佐藤卓磨、今村佳太(川口良介撮影)
 事件を知った世間からすれば、「スポーツ界、またか!」という印象が強い出来事ではある。だが、他の事例では見られない主体的な素早い動きを取ることで差別化され、その動き、つまり謝罪自体が特異化され、「素直に謝った」という印象が非常に強まりやすいのである。

 また、マスメディアに対しても先手を取ったといえるだろう。通常、スポーツに関わる不祥事の報道は分かりやすい分、世間の興味関心が強い一方で、事実としての情報はそれほどのボリュームがあるわけではない。テレビのワイドショーであれば、事件の中身自体は1回の、しかもほんの数分で伝えきれる内容であることが少なくない。