しかし、当事者がすぐに前に出てこないとなれば、話は別である。事態の本質に確証が持てない分、臆測ベースの話が展開されたり、関係者からの聞き取りや、関連する識者が露出することで、報道が形成されたりする。

 そうすると、内容はともかく「連日放送されている」という強い印象が、世間では「非常に重大な問題だ」と見る向きに転化されていく。さらに「関係者雲隠れ」などといわれ、マスコミに追われる当事者という構造が作られやすい。

 ただでさえ、逃げているように見えれば、ネガティブな印象が作られる。その上、追われながら取材に対応するとなれば、追う側の論理に沿って返答せざるを得なくなり、まさに後手後手に回ってしまうのである。

 今回は、新事実が出てこない限り、おそらくこのような構造にはならないはずだ。もちろん今後協会内での処分や、場合によってはインドネシアの国内法に基づく法的措置の可能性は残されるものの、少なくともネガティブな世論は大きくなり得ないだろう。

 もう一つは、日本選手団の山下泰裕団長の存在である。山下団長は、言わずと知れた柔道家であり、その卓越した選手成績により国民栄誉賞まで受賞した人物である。引退からさかのぼると203連勝、また対外国人には生涯無敗と、他に類をみない大記録を打ち立てた。

 指導者に転じてからも全日本柔道の要職を担うのみならず、東海大学教授・副学長や、日本オリンピック委員会理事など、後進育成の現場を牽引(けんいん)してきた。
2018年8月、ジャカルタ・アジア大会のバスケ男子日本代表選手の問題で、記者会見で厳しい表情を見せる日本選手団の山下泰裕団長(共同)
2018年8月、ジャカルタ・アジア大会のバスケ男子日本代表選手の問題で、記者会見で厳しい表情を見せる日本選手団の山下泰裕団長(共同)
 業界ではいわば「大御所」とも呼べる人物が、即座に会見の場を開き、事情説明を行った上で「大変なご迷惑をかけた。期待を裏切ってしまって申し訳ない」と謝罪した。さらに、山下団長はこのようにも述べた。


「言い訳になってしまうが、選手たちは『歓楽街ということを知らなかった』と話している」
「(選手が移動する際は公式ウエアの着用が奨励されており)食事をとるためだけだったので、ウエアを着用したままだったと思う」
「自分たちの軽率な行為だった、とんでもないことをした、と。全員、深く反省している。不服申し立てもなかった」