文言だけをみれば、本人が言及しているように言い訳とも取れる言説であり、買春というイリーガルな行為が擁護される余地は全くない。しかし、この山下団長の謝罪と説明は、事態の沈静化に一定の効果があるだろう。

 心理学では「ホランダーの法則」といって、「過去に組織や世間で大きな功績を残したリーダーの発言は、『この人が言うなら間違いないんだろう』という印象を与えやすく、信頼度が相対的に高くなりやすい」という傾向がある。

 加えて、山下団長はいわゆる「スネに傷のない人物」である。現代の日本では、ある人物の過去の履歴はインターネット媒体を中心に簡単に照会でき、仮に不祥事やスキャンダルがあれば、何年前のことであっても事あるごとに取り上げられ、世間にさらされてしまう。

 「過去に何かあった」人物は、仮に過去と今の事案には全く関係がなくとも、その人が前に出るだけで、批判の対象となったり、いわゆる「炎上」を長引かせる結果にもなり得る。山下団長には、それがないといってよい。

 過去の失点が少ないということは、その人物の今の好印象につながり、ひいては発言の信頼性を高めるのである。実際、山下団長の会見自体や発言内容に批判的な見方や報道はほとんどない。その意味では、組織マネジメントや指導者としての競技への影響力のみならず、危機管理・回避の面からも、山下氏を団長に据えた人事は、有用であったと考えられる。

 今回のバスケ4選手の愚行は、不法なものであり、到底容認できるものではない。しかしながら、心理学者である私の立場からいえば、アスリートにおけるマインドセット(意識づけ)のマネジメントには、実はまだまだ改善の余地がある。
2018年8月、アジア大会男子バスケットのカタール戦第1クオーター、パスを出す橋本拓哉(中央)=ジャカルタ(共同)
2018年8月、アジア大会男子バスケットのカタール戦第1クオーター、パスを出す橋本拓哉(中央)=ジャカルタ(共同)
 ましてや、東京五輪の開催国枠獲得を目指すバスケ男子代表には、プレッシャーやストレスをうまくコントロールしながら、コート外でも逸脱しない意識や心理的状態を自分で作り出す術を教授できるような環境が、一層求められたはずだ。

 単に、トップダウンで選手として順守すべき事項を伝え、意識の向上を意図するだけのケアにとどまらない、アスリート組織の運営を期待したい。