(5)論点5:政策の目的と手段は整合的か

 そもそも今回のサマータイム導入の動きは、2020年に開催される東京五輪・パラリンピックの競技が灼熱の暑さの中実施されるのを回避したいとの思惑から発したものであるが、政策を評価する上では、政策の目的と政策の手段とが整合的か否かが重要となる。

 つまり、国際オリンピック委員会との間で日本時間の朝7時以前にはマラソン競技を開始してはならないという取り決めがあるのなら別であるが、種々の競技開始時刻が朝の早い時間に前倒しできるのであればそれで対応すればよいだけであろう。しかも、競技によっては開始時間が前倒しされることにより、サマータイムが導入されない場合に比してかえって暑い環境下で競技が行われることになることも見逃せない。

 そもそも、東京五輪・パラリンピックは建前上は東京都が責任を持つべき大会であり、極端な話、残りの46道府県には全く関わりのない話である。にもかかわらず、サマータイムなどという全国を巻き込む、場合によっては東京五輪・パラリンピックまでの時限立法的なその場しのぎの対応を是認できる国民はどれだけいるだろうか。

 また、就業時間終了後様々な余暇活動に時間を費やすことで消費を喚起すると見込むことはそれが実現すれば睡眠不足をもたらすことになるし、サマータイム開始時及び終了時に時計の針を進めたり遅くしたりすることで睡眠障害をもたらすなど、健康を害するリスクを考慮しなければならない。
東京五輪ではマラソンや競歩の会場となる皇居外苑で、穴の開いたチューブから散水を行い、暑さ対策の実証実験が行われた=2018年8月13日、東京都千代田区(川口良介撮影)
東京五輪ではマラソンや競歩の会場となる皇居外苑で、穴の開いたチューブから散水を行い、暑さ対策の実証実験が行われた=2018年8月13日、東京都千代田区(川口良介撮影)
 実際、ロシアではサマータイム移行時に心筋梗塞患者が増加したため結局サマータイムを廃止したし、オーストラリアでは、サマータイム移行時に男性の自殺が増える傾向があることも指摘されている。つまり、サマータイムの実施により消費が喚起され経済効果が得られたところで医療費が嵩み、人命が失われることになれば、経済ばかりでなく社会的にもメリットがデメリットを上回るとは言い難いだろう。