加谷珪一(経済評論家)

 猛暑の中での開催が確実視される東京五輪の暑さ対策として、サマータイム導入論が急浮上している。サマータイムは過去、何度も議論の対象となったものの、導入が見送られてきたという経緯がある。サマータイムの導入について議論することは大いに結構だが、五輪の暑さ対策として、拙速に導入するというのはあまりにもリスクが大きい。

 このところ酷暑ともいえる状況が続き、各地で熱中症の被害が相次いでいる。こうした中、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は安倍晋三首相と会談、暑さ対策としてサマータイムの導入を要請した。これを受けて政府・与党内ではサマータイム導入の是非について議論が行われている。

 サマータイムは、日照時間が長い夏季に限定して標準時よりも時間を進める制度で、欧米では広く導入されている。朝の涼しい時間帯を有効活用できるほか、外が明るい時間帯に仕事を終えられるので、個人消費も活発になるといったメリットがある。

 今回は、こうした全般的なメリットを考えてというよりも、猛暑対策として涼しい時間帯を活用したいという部分が大きいと考えられる。

 夏の期間だけ1時間もしくは2時間、時間を早めれば、ある程度の暑さ対策になるのは間違いない。だが、五輪という一大イベントのためということであればなおさらだが、想定されるリスクの大きさを考えると導入は見送った方が賢明だろう。

 サマータイム導入に伴う最大のリスクは情報システムのトラブルである。

 あらゆる情報システムは、何らかの形で時間を認識して作業を行っている。コンピューターのプログラムというのはすべて時間をベースに動いていると思ってよい。
2011年6月、東京電力福島第1原発事故をきっかけに、企業で導入されたサマータイムで午前8時前に出社する女性(鳥越瑞絵撮影)
2011年6月、東京電力福島第1原発事故をきっかけに、企業で導入されたサマータイムで午前8時前に出社する女性(鳥越瑞絵撮影)
 だが、どのような方法で時間を認識するかはシステムによって異なっている。システム内部に時計機能があって、そこで時間をカウントするものもあるし、衛星利用測位システム(GPS)を使って時間を取得するシステムもある。サマータイムを導入する場合には、ある期間だけその時間を早め、その後、元に戻すという作業が必要となるので、時間をシフトする機能を実装していないシステムの場合にはシステム改修が必要となる。

 日本では過去、何度もサマータイムが議論されてきたので、情報システムの中には、サマータイムに対応できるよう時間をシフトする機能をあらかじめ組み込んでいるものもある。だがすべてのシステムがそうではないため、いざ導入ということになった場合には、あらゆるシステムを検証し、必要なものについては改修を実施しなければならない。