田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 安倍晋三首相が鹿児島県で自民党総裁選への立候補を表明した。すでに出馬表明した石破茂元幹事長との一騎打ちの公算が大きい。

 安倍首相は総裁選での3選を決めた後に、憲法改正を具体的な視野に入れる政治的スケジュールを組むといわれている。最新の世論調査では、「正直、公正」をキャッチフレーズにした石破氏を、首相が支持率で上回っていると報じられている。私見だが、石破氏のあまりにも道徳の説教めいた、そして具体的な政策の見えない発言が、当初あった彼の支持率を減少させてしまったのではないだろうか。

 現在のところ、勝利の確率は、安倍首相の方がはるかに高いだろう。一方、石破氏に対しては、朝日新聞だけでなく、なぜか野党勢力までもが、熱心に推しているようだ。だが、印象論ではあるが、石破氏の保守層での人気が急速に冷めているように感じる。

 いずれにせよ、「石破応援団」が野党や反安倍的な報道を繰り返した朝日新聞などであれば、彼らが声援を送れば送るほど、石破氏には不利に働くのは素人でも分かる。ひょっとしたら、反安倍陣営こそが熱烈な「安倍3選応援団」かもしれない。

 ところで、安倍首相が仮に3選されたとして、その後の見通しはそれほど明るくはない。むしろ、次の点を考えると、日本の経済に暗雲が待ち構えている。その暗雲こそ、安倍首相が3選されれば避けては通れない問題である。

 その問題とは日本銀行に関することだ。日銀の政策がまったくふ抜けになっていて、その主因は雨宮正佳(あまみやまさよし)副総裁を中心とした「反アベノミクス」勢力が日銀内部で力を得てきていることである。

 黒田東彦(はるひこ)総裁と安倍首相の間には、一定の信頼関係が構築されている。だが、現在の日銀の政策決定の動向を見ていると、アベノミクスの「第1の矢」とは違う方向に政策が傾斜していることは明白だ。例えば、最近の金融政策決定会合の内容と、会合に参加する政策委員会の審議委員の対応を見れば、「雨宮一派」が日銀の中で勢力を増しているのは、ほぼ確かだろう。
2018年8月、自民党総裁選への出馬表明後、鹿児島市内での演説会を終えて森山党国対委員長と握手する安倍晋三首相(奥清博撮影)
2018年8月、自民党総裁選への出馬表明後、鹿児島市内での演説会を終えて森山国対委員長と握手する安倍晋三首相(奥清博撮影)
 7月31日に開かれた政策決定会合では、「政策金利のフォワードガイダンス(将来の指針)」、「長期金利が上下にある程度変動しうるもの」を決めた点に大きな特徴がある。そしてこれらが、私見ではアベノミクスの目標であるデフレ脱却と日本経済の再生にむしろ逆行しかねないものだと思う。

 前者については、正直、何が言いたいのか分からない。おそらく自分たち(雨宮なるもの)が勝手に経済状況に応じて「デフレから脱却していようがしていまいが政策金利を操作します」という宣言ではないだろうか。