「国民の財産の電波は有限だからその利用には公共性が求められる」というのがその根拠だったが、ケーブルテレビなどの普及で、電波は「有限」ではなくなったという理由で「公平原則」は1986年に撤廃された。

 放送で偏った番組を放送しても「公共の活発な意見交換を助する」と許されることになり、ニュース専門局はCNN、MSNBCが民主党系、FOXニュースが共和党系と旗色を鮮明にして視聴者の獲得を競っている。

 当然その主張は競争を反映して過激になっていくが、同じ民主党系のCNNとMSNBCの間でも、どちらがより民主党支持者を多く獲得できるかを競って番組の内容もエスカレートしていった。

 その競争の主役が「司会者」で、彼ら彼女らの発言が視聴者数を左右し、ひいては放送局の経営をも影響することになるので、保守革新いずれにせよ、その考えを強く主張できる人材が重用されることになる。

 冒頭で紹介した視聴者数ナンバーワン番組のハニティー氏も、超保守派の論客として知られ、歯に衣着せぬ発言で敵が多く、常にボディガードが氏の周辺を守っていると言われる。

 だが、そのハニティー氏も真っ青になるほど過激な「ホスト」が現れた。その名も「インフォウォー」つまり「情報戦争」という名前のウェブサイトを運営しているアレックス・ジョーンズ氏で、同名のニュース番組をユーチューブで配信し、240万人のチャンネル登録者を抱えるまでになっていた。
ユーチューブでニュース配信をしていたアレックス・ジョーンズ氏
ユーチューブでニュース配信をしていたアレックス・ジョーンズ氏
 「いた」と過去形で書いたのは、ジョーンズ氏の発言は余りにも一方的で「ほとんどの銃乱射事件は国際派への関心を集めようとする陰謀だ」などと信ぴょう性に乏しいので、ユーチューブが「フェイク(偽)ニュース」の発信源として「インフォウォー」を排除してしまったからだ。

 しかし、インターネット上の動画配信が日常化していく時代には「悪貨が良貨を駆逐する」ように、新しいネット放送のホストたちがケーブルテレビの先人たちより、さらに過激な放送をするだろうことは容易に想像できる。

 翻って日本のテレビニュースだが、今のところはキャスターという肩書きの人たちが「中立」「公平」「公正」さを建前にニュースを司会しているように見える。しかし、ニュースの後に蛇足のようにつけ加える「後説(あとせつ)」で自らの思いを吐露するのが、もはやアンカーに求められる規範を逸脱しているのではないか。

 さらに、「政治的な公平性」などを求めた放送法4条の撤廃も論議され始めており、加えて放送法の規制を受けないネットテレビも当然増えることが予想されるので、米国のようにキャスターに代わって「司会者」が幅を利かせる時代が来ると考えた方がよいだろう。