そこで気になるのは8月18日からインドネシアの首都、ジャカルタで開催されている第18回アジア競技大会である。今大会ではeスポーツが公開競技として実施される。その競技種目は次の6タイトルである。

『ウイニングイレブン 2018』(コナミ)

『スタークラフトⅡ』(ブリザード・エンターテインメント)

『リーグ・オブ・レジェンド』(ライアットゲームズ)

『ハースストーン』(ブリザード・エンターテインメント)

『クラッシュ・ロワイヤル』(スーパーセル)

『アリーナ・オブ・ヴァラー』(テンセント)

 6タイトル中、テンセントが直接リリースするタイトルが1タイトル、前述の傘下企業がリリースするタイトルが2タイトル、また、出資先でもあるブリザード・エンターテインメントのタイトルが2タイトル。6タイトル中5タイトルにテンセントが何らかの形で関与しているのである。つまり、今夏のアジア大会でのeスポーツは、テンセントによるテンセントのための競技といえなくもない。
中国・北京で開かれたイベントで設置されたテンセントのブース=2017年4月(ロイター=共同)
中国・北京で開かれたイベントで設置されたテンセントのブース=2017年4月(ロイター=共同)
 今回のアジア競技大会では何の議論も起きずに前述6タイトルが決定されたが、仮に五輪でeスポーツが正式種目になるならば、競技に用いるゲームは厳正に選ぶべきだ。五輪憲章「IOCの使命と役割」の項には次の一文がある。

 「スポーツと選手を政治的あるいは商業的に悪用することに反対する」

 まとめていくと、日本は「eスポーツ発展途上国」「他の国と比べて遅れている」と言われることがあるが、eスポーツの普及に早い、遅いという価値観はそぐわない。もちろん、eスポーツが栄えていることは、良いことでも悪いことでもない。国によってゲームの歴史と文化は異なり、スポーツの定義も違うのだ。双方の違いについて理解し、双方を認め合うことが真の国際人の態度である。

 ゆえにeスポーツ推進派は五輪を錦の御旗にするだけではなく、日本特有の文化になじむようなロジックと手段を考えるべきだ。また懐疑派は「eスポーツはスポーツではない」と叫ぶだけでは世界では通用しないことを知るべきだろう。

 なお、一部報道で「日本オリンピック委員会(JOC)はeスポーツをスポーツと認めていない」「アジア大会で派遣されるeスポーツ選手は日本代表選手ではないため開会式に参加できない」という趣旨が伝えられたが、これは誤解のようだ。

 JOC広報・企画部長の柳谷直哉氏によれば、eスポーツの競技団体である日本eスポーツ連合から加盟申請を現時点で受けていない。また、過去に公開競技の選手団は開会式には参加しないのが通例とのことだった。(一部敬称略)