玉木正之(スポーツ文化評論家)

 eスポーツ(コンピューターゲーム)は紛れもないスポーツであり、五輪の正式競技となっても不思議ではない。しかし…。

 2020年の東京五輪・パラリンピックの開催がいよいよ2年後に迫り、競技場の建設工事が急ピッチで進んでいる。真夏開催による酷暑と熱中症の問題や、都心の鉄道・クルマの混雑問題など未解決の諸問題もあり、あと2年間のうちにどのような解決策が具体化されるのか、少々心配ではある。

 が、一方で、五輪に関する話題で、少々首をかしげたくなる事態も進行している。

 それは東京大会でのことではない。6年後のパリ大会から、新しい競技が正式競技として採用されそうなのだが、それが「eスポーツ」だというので、正直言って驚いている。

 「eスポーツ」とは、「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」のことで、つまり「電子工学(エレクトロニクス)」を用いたスポーツのこと。早い話が、コンピューターゲームのことなのだ。

 この情報を既にご存じの方でも、「あのオタクたちのゲームが、五輪の正式競技になるとはねえ」と首をひねる人が少なくないと聞く。初めて耳にした人は、「えっ!?モニター画面を見ながら、コントローラーをカチャカチャ動かすゲームが、五輪競技に!?」と仰天するのではないだろうか? 

 「ゲームがスポーツ?」と首をひねる人たちは、身体を(指先しか)動かさず、椅子に座ってモニター画面の映像を見続けるコンピューターゲームなど、不健康の極みであり、到底「スポーツ」とは呼べない、と考えているに違いない。
対戦型などのゲームでプレーヤーが腕を競う「eスポーツ」、格闘ゲーム「ストリートファイター5(スト5)」のエキシビションマッチ技=21日午後、千葉・幕張メッセ(宮川浩和撮影)
対戦型などのゲームでプレーヤーが腕を競う「eスポーツ」、格闘ゲーム「ストリートファイター5(スト5)」のエキシビションマッチ技=21日午後、千葉・幕張メッセ(宮川浩和撮影)
 しかし今やeスポーツは、全世界的にプロの競技者(ゲーマー)が存在し、賞金総額が20億円を超す超ビッグな大会も催され、億単位の年収を稼ぐ競技者も出現しているという。

 また、欧米の「SPORTS」の感覚で「スポーツ」の概念を考えた場合、コンピューターゲームは決して一概に「スポーツではない」などと斬り捨てることができないのも事実なのだ。

 2020年には、東京大会だけで実施される正式競技として、サーフィン、スポーツクライミング、野球・ソフトボール、空手、スケートボードの5種類が選ばれた。

 が、立候補した競技の中には、チェスやコントラクトブリッジ(トランプを使って4人でテーブルを囲んで行うゲーム)などもあり、残念ながら落選したとはいえ、それらのゲームも正式なスポーツと認められ、選考の対象になったのだ。

 またアジア競技大会では、チェス、ビリヤード、競技ダンス(社交ダンス)のほか、囲碁や中国象棋(シャンチー)が正式競技として実施されたこともあった。もちろん、それらはすべて「SPORTS」なのだ。

 「SPORTS」とは、もともとラテン語の「DEPORTARE(デポルターレ)」から生まれた言葉で、「日常生活(労働や仕事)から離れた遊びや祭りの時空間」という意味だ。