2018年08月30日 13:18 公開

アルゼンチン政府は29日、悪化する経済危機を受け、国際通貨基金(IMF)に500億ドル(約5兆5000億円)の融資を前倒しするよう要請した。

アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は突然の要請について、アルゼンチン経済に信頼を取り戻す意図だと述べた。

アルゼンチン・ペソは今年、対ドルで40%以上下落しており、インフレも広がっている。

IMFは29日、アルゼンチンとの取り決め強化と実施時期の変更を検討していると認めた。

IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は声明で、「アルゼンチンの政策努力への支持と、修正された政策計画の進展に向けて同国政府を支援する準備ができていることを強調する」と述べた。

投資家は、アルゼンチンが重い政府借入金を返済できず、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性があるとと懸念している。

BBCの特派員は、IMFに緊急援助の加速を求める決定は、アルゼンチンの経済的困窮がきわまっているのをうかがわせると報じた。

5月にアルゼンチンとIMFが融資枠で合意した際にマクリ大統領はは、同国経済は回復すると期待しており、資金の利用は計画していないと述べていた。

大統領の発言

マクリ氏はテレビ演説で、「先週1週間、我々は市場の信頼、特に2019年の資金調達能力についての信頼が損なわれた兆候を確認した」と述べた。

「我々は来年の金融プログラムに関するコンプライアンス(順守)を保証するために必要な全ての資金手当てを前倒しすることでIMFと合意している」

「この決定はあらゆる不確実性を排除することが狙いだ」

同氏は、政府借入金を抑制する追加対策もあわせて実行されると付け加えた。

野党の主張

マクリ氏が5月に下したIMFに支援を要請するとの決定は、国内からも多くの批判を受けた。

アルゼンチンではIMFは広く嫌われている。IMFが融資を打ち切り、金融支援も拒否した後に起こった2001年の経済危機も、IMFの責任とされた。

野党は、今回の経済危機は資本規制を終わらせ、社会保障を削減するなどといったマクリ氏の中道右派的政策に責任があると主張している。

IMFの見方

何年もの間経済問題に苦しめられてきたアルゼンチンは、史上最低の通貨下落を受け、5月にIMFに支援を求めた。

同国はIMFとの取り決めの一部として、2桁インフレへの対処と公的支出の削減を約束した。

IMFのラガルド専務理事は当時、計画はアルゼンチン政府によって策定されたもので、「アルゼンチン国民全員の利益のため、経済を強化するのが狙い」だと述べた。

ラガルド専務理事は29日夕方のマクリ大統領との会談後、合意した取り組みの強化と融資プログラム実施時期の再検討をアルゼンチン当局と共同で進めるようIMF職員に指示したと明らかにした。

またラガルド氏は、当局者の「強い献身と決断」が、難しい金融状況にあるアルゼンチンのかじを取る助けになると確信していると述べた。

過去にも同じ事態が?

アルゼンチン政府は2001年に債務不履行に陥り、銀行システムも大きくまひした。

これがアルゼンチン国民に与えた影響は甚大で、多くの国民が、豊かさがあっという間に消失するのを目撃した。

2001年の経済危機を経験した人々は、政府による規制の復活とそれによる銀行の操業停止を恐れている。

同年から1年続いた制限の下では、人々は自分の銀行口座から自由にお金を引き出せず、一般的なアルゼンチン国民の生活は非常に困難なものとなった。


<解説>どのようにして現状に至ったのか――ダニエル・ギャラス(ブエノスアイレス)

世界最高の金利とIMFからの支援は、投資家を安心させられていない。

投資家の懸念に応えるあらゆる計画にもかかわらず、アルゼンチン・ペソは依然としてその価値を下げている。

トルコやブラジルなど他の新興市場も今年、自国通貨の切り下げに苦しんでいるが、アルゼンチンの状況は特に問題が多い。

アルゼンチンはG20加盟国で最高のインフレ率を下げられていない。IMFと約束した経済再建の実行にも失敗している。その施策のほとんどは、公的支出と借り入れの抑制を狙ったものだった。

マクリ大統領は経済回復を公約に掲げて当選したが、今のところ進展はほとんどないようだ。

多くの製品やサービスの価格が未だに、米ドルと緊密な関係にあるため、アルゼンチン人の日常生活は値上がりの一途にある。

インフレの悪循環と公的支出削減の組み合わせは、給料上昇が物価上昇の速度に追いついていないことを意味し、それがほとんどの国民をさらに貧しくしている。


(英語記事 Argentina asks IMF to release $50bn loan as crisis worsens