2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)では、直接的な被災地ではなかった首都圏においても、JRをはじめとする鉄道がストップし、515万人という膨大な「帰宅困難者」が発生しました。この時、長い距離を頑張って徒歩帰宅された方も多かったかと思います(私は動き出した私鉄で帰れた組でした)。そして「大変だけど、なんとか歩いて帰れる」という経験値を持たれた方も多いのではないでしょうか。

 しかし、もし「首都直下型地震」が起きた時、「東日本大震災の時は歩いて帰れた、だから首都直下地震でも歩ける、実際大阪の地震ではみんな歩いていたし」と考えることは、生死に関わる極めて危険な事項です。

 東日本大震災時の首都圏と大阪北部地震の場合、大都市の公共交通機関が停止して多くの帰宅困難者が発生した事象は共通しています。しかし、この2件において「歩いて帰るのが大変だった」という経験値は、今後の防災対策の基本にしてはいけない項目です。本来は、「大地震が発生した場合、少なくとも3日程度は会社にとどまり、安全が確保されるまで徒歩で帰宅することは避けなければならない」と考えるべきなのです。

 多くの徒歩帰宅者が路上を埋め尽くしている状態で、大規模な余震やより大きな本震が発生した場合、建物の倒壊、道路の破壊、火災旋風の発生、あるいは人の集中による「群衆雪崩」の発生により、多数の死傷者が生じると考えられています。そのため、例えば東京都などは、2012年に「東京都帰宅困難者対策条例」を定め、企業に対して3日間、従業員を帰宅させない準備をすることを努力義務としています。

 しかし、企業が防災備蓄に励んでも、そこで働く私たちひとり一人が、「多分大丈夫」とか「前の時は歩けた」などと考え、勝手に徒歩で帰宅してしまっては意味がありません。「大地震が発生した場合、都心部の徒歩移動は生死に関わる」と考え、安全が確認されるまでは移動をしないという意識や、そのために必要な道具の準備が重要です。
新大阪駅でタクシーを待つ行列=2018年6月18日夜、大阪市淀川区(彦野公太朗撮影)
新大阪駅でタクシーを待つ行列=2018年6月18日夜、大阪市淀川区(彦野公太朗撮影)
 もちろん、日頃から防災グッズなどを持ち歩くのも対策の一つですが、ぜひ「家族との安否確認」の手段がきちんと取れているか、確認をしてみてください。家族の安否が確認できない場合、企業が備蓄品の準備などをしていても帰宅せざるを得なくなります。普段から連絡先を控えたメモやポケットアルバムを持ち歩く、スマホアプリでやり取りができるか定期的に確認をする、といった対応をぜひ行ってみてください。