佐野正弘(ITライター)

 8月21日、菅義偉(よしひで)官房長官が「日本の携帯電話の料金は4割程度引き下げる余地がある」と発言したことが、携帯業界で大きな波紋を呼んでいる。27日に菅氏はその根拠を明らかにした。

 発言の背景には、経済協力開発機構(OECD)加盟国の調査で、日本の携帯電話料金が平均の約2倍であることや、2019年の携帯電話事業参入を予定している楽天が、料金を既存事業者の半額程度に設定する計画を公表していることがあるという。

 スマートフォンの普及で携帯電話がコミュニケーションだけでなく、日常生活に必要不可欠な存在となった。そうしたことから、家計に占める携帯電話料金の割合は年々上昇してきた。

 それが諸外国より高いというのであれば、料金引き下げは当然と思う人は多いことだろう。だが正直な所、今回の菅氏の発言は料金しか目を向けておらず、携帯市場を多角的に評価できていないと感じてしまう。

 まず、携帯電話の料金に関して、諸外国と比較する上では、国によって料金設計のあり方自体が大きく異なることを考慮しなければ、公平とはいえないだろう。

 実際、日本では、端末と回線をセットで提供し、端末価格を大幅に値引く販売手法が一般的なことから、通信料金が高く、端末価格が安くなりがちだ。だが、海外では端末の値引きが日本ほど大きくないため、通信料金が安く、端末価格が高くなりやすい。だから、あくまで現状の料金を比較するならば、双方の特性を考慮し、通信料だけでなくトータルでの比較が求められるのである。

 総務省が公開している「電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査」の平成28年度版を見ると、データ通信量が20GBでは東京の料金が8642円と、最も低いロンドン(3684円)と比べ場合以上の料金となる。だが、同じ料金プランで端末(iPhone7(32GB))の割賦料金込みで比較すると、東京の料金は9290円で、ロンドン(8461円)との差は1000円未満と、大きな差があるわけではないことが分かるだろう。
iPhone X(左)とiPhone 7(ゲッティイメージズ)
iPhone X(左)とiPhone 7(ゲッティイメージズ)
 ちなみに、端末代の大幅な値引きに関しては、これまでも総務省がいわゆる「実質0円」をガイドラインで事実上禁止するなどの厳しい措置を取っており、その是非については議論を呼ぶところではある。だが日本の携帯電話に係る支出を諸外国と比べるならば、トータルコストを考慮しなければ正しい比較はできないわけだ。