その一つが、いわゆる「格安スマホ」である。楽天モバイルなどのMVNOが提供するサービスが代表的だが、ソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドや、KDDI傘下のUQコミュニケーションズがMVNOとして展開する「UQモバイル」など、俗に大手キャリアの「サブブランド」と呼ばれるサービスも選択肢の一つに挙げられるだろう。

 もう一つは最近増えている、より安価に利用できるキャリアの料金プランである。具体的には「auピタットプラン」のように、毎月のデータ通信量に応じて料金が変化するプランや、特定のスマホに乗り換えるだけで毎月1500円の値引きが受けられる「ドコモウィズ」などが挙げられ、キャリアを変えずに料金を抑えたい人にはメリットが大きい。

 だが、こうしたサービスを実際に使っている人は意外と少ない。MM総研の「国内MVNO市場規模の推移(2018年3月末)」を見ると、一般的な消費者向けのMVNOを示す「独自サービス型SIM」の回線契約数は1082・8万回線で、ようやく1000万を突破したというところだ。

 大手キャリアの場合を見ても、auピタットプランの契約数は、大容量の「auフラットプラン」と合わせて2018年5月末時点で約800万、ドコモウィズは2018年4月末時点で約200万と、いずれも契約数全体の比率からするとまだ高いとはいえない状況だ。

 では、なぜ消費者は安価な料金プランやサービスがあっても、なかなか利用しようとしないのか。それは消費者自身が、携帯電話の料金が複雑だからといって、料金や契約の見直しに消極的、あるいは興味を持たないからではないだろうか。

 筆者は仕事やプライベートで、時々携帯電話の料金について相談を受けることがある。だが、毎月の料金をチェックしない人、新しい料金プランやサービスの存在を知らない、あるいは聞いたことはあるものの、「難しい」「面倒」などの理由で、古い料金プランをそのまま使い続けている人に出くわすことが多い。

 「携帯電話の料金体系が複雑なのが悪い」という人も多いだろう。実は、過去を振り返ると、複雑化した料金プランを整理してシンプルにしたものの、消費者や行政からのさまざまな要望に応えるうちにまた複雑化する、という歴史を繰り返しているのである。ビジネスとして多様な声に対処するには、単にシンプルにすればよいというものではないことから、やはりキャリアの料金体系を変えるよりも、消費者の側が賢くなることが必要ではないかと筆者は感じている。
「格安スマホ」コーナーではSIMロックフリー端末が一堂に会している=2016年3月
「格安スマホ」コーナーではSIMロックフリー端末が一堂に会している=2016年3月
 料金の安いサービスが存在しても、それを消費者が選んでくれなければ意味がない。今、政府が料金引き下げのために取り組むべきは、「民事介入」という筋の悪い手で市場を混乱させるのではなく、携帯電話料金に対する消費者の関心を高め、そのリテラシーを向上させていくための手助けをすることなのではないだろうか。