4割引き下げが可能かどうかは別として、わが国の携帯料金は、海外の事業者に比べて複雑で、利用者から「不透明」だとの不満があるのは事実だ。分かりやすい料金体系は顧客ニーズなのは間違いない。通信料金に端末の代金が含まれたり、固定通信とセットにすると割り引かれたりするから、実に分かりにくいのである。

 ビジネスの常識として、一気に料金の4割値下げは通常あり得ない。というのは、一般に粗利益は3割というのが相場だ。

 だから、一部には、4割も携帯料金を引き下げたら、通信キャリア大手3社の通信事業の営業利益は一挙にゼロになるというアナリストの分析もある。むろん、菅氏は、そんなことは先刻承知のはずだ。

 ではなぜ、無理を承知でこのような発言をしたのか。そこには、永田町のさまざまな思惑が秘められているとみていいだろう。

 まず、背景には、競争が促進されない通信業界へのいらだちがあるのは間違いない。通信は1985年に自由化された。狙いは競争の促進だった。

 その結果、電電公社と国際電信電話(KDD)による市場独占状態は解消され、KDDIの前身の第二電電(DDI)、さらにソフトバンク前身の日本テレコムなどが通信事業に新規参入した。当然、これらにより競争が起こり、料金は下がるはずだった。
2018年8月27日、定例会見を行う菅義偉官房長官(春名中撮影)
2018年8月27日、定例会見を行う菅義偉官房長官(春名中撮影)
 ところが、競争原理は働かなかった。いつの間にやら、大手3社の寡占状態が定着、すなわち横並びが続いたため、競争促進とはほど遠く、料金も思惑通りに下がらなかった。政府は、この状況をかねてから問題視してきた。

 安倍内閣は、もともと民間への「口先介入」が多い。賃上げ要求や雇用拡大など、経済界にたびたび要望してきた。

 実は、携帯料金についても、15年に安倍晋三首相自らが「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題」と発言した経緯がある。また、総務省も大手3社に対し、再三にわたって、携帯料金のユーザー負担の軽減、「2年縛り」といった商慣行の是正、自社で販売したスマホを他の通信会社で使えなくする「SIMロック」の解除などを求めてきた。