これに対して、3社がその都度対応した結果、割安プラン新設などにはつながった。しかし、肝心の料金の値下げはおろか、寡占状態も崩れなかった。元総務相の菅氏は、歯がゆさやじれったさを感じてきたはずだ。

 政府は今回、通信料金について、景気対策からも考えているフシがあるのだ。というのは、政府には、来年10月の消費税10%への増税を控え、伸び悩む個人消費への焦りがある。通信料金の値下げにより、消費拡大を図ろうとしても不思議はない。

 総務省の調査では、昨年の世帯当たりの通信料・通話料は年10万250円と増加傾向で、10年前に比べて2割以上増え、家計消費に占める割合も増えている。消費増税による消費の冷え込みが懸念される中で、携帯料金引き下げによって家計負担を軽減し、別の消費に回してほしいという願望だ。

 さらに、政治的な「ウラ読み」もある。発言のタイミングが微妙だからだ。自民党総裁選を前にして、永田町の思惑が大いに絡むという説だ。携帯料金の引き下げは身近な問題として国民の関心が高い。家計負担の軽減で恩を売り、「人気取り」を狙っているとの見方だ。

 もっとも、こうした見方に対して逆の見方も成り立つ。ご存じのように、日本銀行は、13年以降年率2%のインフレ目標を打ち出している。「アベノミクス」の一環だ。ところが、17年時点でいまだ上昇率は1%に満たない。その意味で、通信料金の値下げは物価を押し下げることになり、デフレに拍車をかけることにはならないか。

 また、政府は日本企業の収益性の低さを指摘し、コーポレートガバナンス(企業統治)の改革による「稼ぐ力」の強化を掲げている。にもかかわらず、大幅な値下げ圧力をかけることは、「稼ぐな」と批判しているのと同じではないか。果たして、その政策と矛盾するのではないか、というわけだ。

2018年9月、東京都内のホテルで行われた
自民党総裁選の決起集会に臨む安倍首相
 そもそも、民間企業の経営マターに、政府が介入することは望ましいことではないという原則的な見方がある。その限りでは正しい。

 とはいえ、介入に一理あるのも確かだ。通信は公共の電波を使用しているからだ。菅氏は、大手通信キャリアについて「公共の電波を利用している。過度な利益を上げるべきではない」と指弾したが、これは賛同を得やすい。

 大手通信キャリア3社の昨年の営業利益は、ソフトバンク約1兆3000億円、ドコモ約9700億円、KDDI約9600億円と、3社でおよそ3兆円にのぼる。国内上場企業の営業利益ランキングで3、4、5位を占める。営業利益率も、ドコモやKDDIは20%前後と、上場企業の平均約7%を大きく上回る。つまり、「稼ぐ力」は申し分ない。大手通信キャリアは日本を代表する優良企業といっていい。