基準地震動の策定の際に、これまで必ず問題にされてきたのが「活断層の有無」である。北海道電力の泊原発は他の電力各社のPWRと歩調を合わせるかのように新規制基準に合わせるべく追加的な安全対策を進めてきた。ところが、2017年4月になって、規制委員会から泊原発のある積丹半島西岸の海底に「活断層の存在を否定できない」という判断が下された。

 このことによって、泊原発の再稼働は全く先が見通せなくなり、窮地に追い込まれた。なぜか。「活断層の存在を否定できない」という規制委は、北海道電力に「活断層がないことを証明してみよ」と迫っているのである。これはいわゆる「悪魔の証明」であり、立証不可能だ。積丹半島西岸の海底をくまなくボーリングし、活断層がないことを証明するのは現実的ではない。

 つまり、非合理極まりない非科学的なことを規制権限を盾に事業者に強いているのである。事業者はその対応に苦慮し、多大な労力と時間を費やすことを強いられているのが現実だ。

 もっと言えば、規制委は自ら科学的判断を避けているとも言えるが、これは今に始まったことではない。規制委発足間もない2012年12月、委員長代理の島崎邦彦氏が、日本原電敦賀原発2号機の敷地内の破砕帯について「活断層の可能性が高い」と指摘した。

 しかしその後、内外の専門家が科学的に慎重な検討を重ねた上で、この破砕帯は「断層ではない」と報告されている。この活断層の有無をもって、事業者を手玉にとる「島崎ドグマ(偏見)」は、氏が委員会を去った後も亡霊のように生き続けているのである。

 ちなみに、震度7に相当する目安の地震動は400ガル以上とされている。よって、仮に620ガルを基準地震動とすれば、泊原発は震度7にも十分耐え得る強度を持つ。もっとも、今回の地震では震源地近くで1505ガルが観測されている。2007年の中越沖地震の際、東京電力柏崎刈羽原発では当時の基準地震動の数倍程度の地震動に対して原子炉は安全に停止した。泊原発では、100〜300ガル程度の地震動を検知すれば自動停止する仕組みになっている。
北海道電力泊原発
北海道電力泊原発
 なお、泊原発1〜3号機で実際に検知された地震加速度はいずれも10ガル以下であった。つまり、もし今回の地震発生時に泊原発が稼働していれば、全道大停電は防げた公算が大きいのである。

 規制委発足から間もなく6年。原子力規制委は一体、いつになれば科学的、技術的リテラシーに欠ける集団から脱皮できるのであろうか。さもなくば、全道大停電のような悲劇がまたいつ国民を襲うかもしれない。言い換えれば、原子力規制自体が「社会リスクを生む」という、国民への背信行為をもうこれ以上許してはならない。