このような患者の葛藤やジレンマの原因を、国立がん研究センターが分析した資料があります。

1・選択肢についての知識・情報の不足
2・ある選択肢に過大・過小な期待をかけている
3・価値観がはっきりしない
4・周囲の人の価値や意見がよくわからない
5・ある1つの選択肢に対する周囲のプレッシャーがある
6・自分の選択を聞いてくれたり認めてくれる人がいない
7・これらの障害を乗り越えるスキルや支援がない

 複雑に絡み合い、このように混乱している患者さんに、「善意の第三者」から、「テレビや週刊誌でこう言っていた」、「この食品がいいらしい」、「この壺のお水に御利益があるそう」などとトンデモ情報が次々送られます。そういう「ありがた迷惑」を断ったら、「罰当たり」と呪いの言葉を浴びせられることも多いらしく、患者さんの不安はさらに増幅します。全くとんでもない話です。

 そこで、がんとは何なのか、そしてみなさんはいざというとき、どうすればいいのか、もう一度整理したいと思います。

 まず、がんには「一度かかってしまうと短期間で死に至る疾患」という印象が、一般の方には存在すると思います。まず、この印象が最大の間違いです。

 実はがんもいろいろあって、本当に千差万別です。1カ月以内に進行して命を落とすものもあれば、10年以上病状が全く進行しないものもあります。それこそ、自然に消滅するがんすらあって、かえって健康食品関係の「治癒ネタ」に使われてしまう場合もあるわけです。

 一方、進行しないがんとして有名なのが、甲状腺がんや前立腺がんです。検診で見つかっても、すぐには治療の必要ないがんの代表になります。また少し専門的な報告ですが、検診で見つかる乳がんにも、ある程度の割合で治療しないでもいい乳がんがあるという報告が最近なされました。

 技術が進めば進むほど情報が増えて錯綜し、100%の答えを出すことが難しくなっています。そして、これだけ医療が進歩しても治しにくいがんがあることも事実なのです。
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター
 つまり、がんといわれたら、治療すべきか経過をみるべきか、手術するのかしないのか、抗がん剤や放射線治療をするのかしないのか、正直そのがんによって選択肢は全く異なるということになります。悪性リンパ腫の中でも濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型リンパ腫があるように、同じ名前の一つのがんでも、本当にさまざまな多様性があるのです。

 当然、同じ名前のがんでも、治療への反応が違うし、個人でも反応が違います。そのようなことを考えた上で、現場では個別に治療を変える必要が出てきていますし、悪性度、個人の状態によって薬の量を変えることなどはもう当然のこととして現場で行われています。