山本隆三(常葉大学経営学部教授)

 9月6日の地震により北海道全域が停電し大きな混乱が発生した。家庭、商店、工場が困るのはむろんのこと、交通機関、信号、ATM、エレベーターなど電気がないと動かないものは多い。マスメディアは「電気のありがたみが分かる」との声も伝えていた。

 マスメディアが停電の原因と伝えたのは、電気の特殊性だ。電気は需要量と供給量を常に一致させる必要があり、そのバランスが崩れると停電するいうことだ。今回苫東厚真石炭火力発電所が地震で停止したことが大規模停電の引き金になったことから、北海道電力は電力供給を苫東厚真に依存しすぎていたとの批判を行うメディアもあった。

 なぜ、北電は苫東厚真に供給の大きな部分を依存するような状態だったのだろうか。発電所を道内に分散しておけばよかったと批判するのは簡単だが、その背景は複雑だ。北電が苫東厚真を主力とし大きく依存せざるを得なかった事情は、戦後の日本のエネルギー供給の歴史に遡る。

 今回の停電は、災害により引き起こされたが、米国カリフォルニア州では、乾燥時に送電線が切断され火花が出ることが山火事の原因ではないかとの疑いが出ており、電力会社が山火事を避けるため乾燥時に送電を停止し、強制停電を行う可能性が出てきている。停電の備えを米メディアが報道しているが、停電の際に参考になると思われるので、これを本稿の最後にまとめている。

 乾燥による大規模な山火事は、米国に留まらず今年ポルトガル、ギリシャ、スウェーデンでも発生している。ギリシャでは91名が犠牲になったと報道された。いずれも地球温暖化が引き起こす熱波と干ばつが原因とされているが、欧州では雨が降らない猛暑により、太陽光発電の発電量が平年比で大きく伸びる一方、太陽光より発電量が大きい風力の発電量が、安定した天候のため大きく落ちる状況になっている。
※画像はイメージです(GettyImages)
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 再生可能エネルギーの今後の導入量は、欧州では風力を中心に増加するとの予測だが、温暖化による猛暑、少雨という安定した気候が将来も続くとなれば、温暖化により風力発電量が減少し、停電が引き起こされる可能性があるということになる。

 第二次世界大戦直後、日本の電力供給の主体は水力だった。豊富な水資源を利用する発電用ダムが世界銀行などの資金を活用し建設された。水力発電は、設備を建設すれば燃料代も不要な競争力のある発電方式だ。やがて、経済成長の開始に伴い電力需要量が急増し北海道、九州、常磐などで生産が行われていた国内炭を利用する石炭火力が建設された。1960年には国内の石炭生産量は5000万トンを超えていたが、この頃から利便性が高い石油に需要が移り始める流体革命が起こる。