藤原節男(原子力安全基盤機構元検査員)

 9月6日深夜3時8分、北海道胆振(いぶり)地方を襲った大地震で、泊原子力発電所が外部電源喪失となり、非常用ディーゼル発電機が自動起動した。北海道電力最大の火力発電所である苫東厚真発電所が緊急停止した影響で、他の発電所がダウンしたためだという。

 原子力発電所には、設計基準事象の事故を起こした時の安全確保のため、原子炉を止め、原子炉や使用済み燃料プールにある燃料を冷却(崩壊熱除去)し、放射能の放出を閉じ込めるために安全上重要な設備がある。この「安全上重要な設備」の電源には、外部電源または非常用ディーゼル発電機を用いる。

 地震により、原子炉を停止した場合に、外部電源喪失と、非常用ディーゼル発電機の起動失敗が重なると、福島原発事故の二の舞となる。したがって、外部電源の信頼性は非常に重要である。

 北海道電力のプレスリリース(2011年5月16日)には「泊原子力発電所の外部電源は、信頼性が確保されている」との記述がある。

 しかし、今回の外部電源喪失は、真弓明彦・北海道電力社長によれば、「極めてレアなケース。すべての電源が落ちるリスクは低いとみていた」とのことであった。総出力165万キロワットの苫東厚真発電所がダウンして、実際に、北海道全域の交流電源が失われたのなら、「極めてレアなケース」とは言えない。偏った電力系統構成を変更し、電力の需給を適正にコントロールしないと、泊原子力発電所は「現在も、極めて供給信頼性のない送電線により電力系統に接続されている」ということになり、北海道電力は結果的に「虚偽報告」を行ったことになる。

 私はこれまで、2011年に爆発した福島原発3号機と同じような危険性が、泊原発3号機もあると警告してきた。 

 さかのぼること2009年3月、独立行政法人「原子力安全基盤機構」の検査員だった私は、泊原発3号機の安全性について上司からの改ざん命令を拒否し、4件の公益通報を行った。それは、検査員としての職務を全うするためであったが、原子力村組織により公益通報は、ないがしろにされ、結局それがために職を追われるという不利益を被った。そこで「このままの原子力村組織では、いずれチェルノブイリのような大事故が生じるに違いない」と考え、120%敗訴を覚悟で、原子力公益通報裁判に訴えた。

 私が行った4件の原子力公益通報は下記の通りである。

(1)泊原発3号機使用前検査での記録改ざん命令について

(2)その記録改ざん命令の是正処置を行わず、問題を放置したJNES(原子力安全基盤機構)組織のあり方について

(3)1999年に敦賀2号機で起きた再生熱交換器連絡配管破断事故の原因究明をめぐる問題について

(4)JNES(原子力安全基盤機構)において、検査ミスを報告する際に本来の報告書を使わず、簡略化した書式(裏マニュアル)で済ませていることについて

 11年3月8日、いつまでたっても公益通報を記事にしない経産省記者クラブの記者たちに、私は「このまま公益通報を記事にしないで、公益通報(内部通報)が無視されている状態が続けば、明日にでもチェルノブイリ級の大事故が生じる。すぐに記事にしてください」と警告メールを送った。

 東日本大震災、そして福島原発事故が発生したのは、その3日後、3月11日のことだった。3月14日午前11時01分の福島3号核爆発は、まさに原子力公益通報「泊3号減速材温度係数測定検査」と同じ原理であった。
福島第1原発4号機のオペレーションフロア(5階)から見た3号機、その奥が2号機(水色の建屋)=2012年5月、福島県大熊町(代表撮影)
福島第1原発4号機のオペレーションフロア(5階)から見た3号機、その奥が2号機(水色の建屋)=2012年5月、福島県大熊町(代表撮影) 
 福島原発事故以降は、日本最強の脱原発弁護団を擁して、東京地裁から東京高裁、最高裁へと舞台を移しながら闘った。しかし、いかんせん、行政府に支配された裁判所では、健闘むなしく全面敗訴という結果に終わった。これら全ての経緯は、私の著書『原子力ドンキホーテ』(ぜんにち出版)に、実名記録としてまとめている。