上念司(経済評論家)

 まずは北海道で被災された方々にお見舞い申し上げます。

 日本で初めてのブラックアウトが起きてしまった。これは由々しき問題だ。ご存じの通り、電力の供給と消費は「同時同量」でなければならない。例えば、今年の夏のように猛暑が続くと、昼間の電力消費が急激に増える。電力会社は「同時同量」を維持するために発電所の稼働を上げてそれに備える。もしそれをしなければネットワーク全体がダウンしてしまうからだ。

 今回のブラックアウトは消費側ではなく、供給側の発電所が地震によって停止したために発生した。苫東厚真火力発電所は、出力165万キロワットで北海道全体の電力需要310万キロワットの約半分を占めていた。ここが地震で止まったことで、「同時同量」が維持できなくなってしまった。

 そもそも、なぜ北海道電力の電源構成が苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所に偏っていたのか?  その理由は人災である。すでに指摘されていることではあるが、もし泊原発が動いていれば全道停電などという事態は避けられた可能性が高い。そして、泊原発を7年も停止状態に追い込んだのは菅直人だ。この点に関しては以下の論説に詳しいのでぜひこちらをお読みいただきたい。


 技術的な問題は専門家に譲るとして、私は経済的な損失について考えてみたい。まず停電によって失われる経済的な付加価値について考えてみよう。電力中央研究所は次のように試算している。

産業連関表(2005年、ただし全国版4)によると、生産活動に中間投入される電力(の金額)は、GDPの2・3%程度であり、その逆数をとると約44である。短期的には電力は代えが効かないとみると、経済活動は、電力コスト1の投入を前提に、その44倍の付加価値を生み出しているという言い方ができる。

 需給対策コストカーブの概観 (今中健雄 電力中央研究所 社会経済研究所)

 では、この44倍という数値を今回のケースに当てはめてみる。被害を受けた北海道電力の発電コストは部門別収支計算書(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)に書いてある。これによれば、電気事業費用の総計は6564億円だ。これを365日で割ると、1日当たりの発電コストが17・9億円になることがわかる。これを44倍した791億円が1日の電力コストを消費して得られる経済的な付加価値だ。

 今回のケースではブラックアウトは約2日間だったので、その分の経済的付加価値の損失は1582億円と試算される。
避難所となった小学校の体育館。停電のため被災者はランタンや懐中電灯などをともし、不安な夜を過ごした=2018年9月6日、札幌市東区
避難所となった小学校の体育館。停電のため被災者はランタンや懐中電灯などをともし、不安な夜を過ごした=2018年9月6日、札幌市東区
 ここまでがすでに失われた経済的付加価値だ。しかし、損失はこれにとどまらない。今後も続く電力不足による経済的な悪影響についても見積もる必要がある。

 北海道電力の不眠不休の努力によって、全道停電状態は9月8日の昼頃には解消した。しかし、実際のところはギリギリの綱渡りだ。苫東厚真石炭火力発電所の完全復旧にはまだかなりの時間を要すると見られており、それまで電源不足は続く。既述の通り、電力は「同時同量」なので、供給側に余裕がないとこの近郊が崩れかねない。再びバランスを崩せばブラックアウトに逆戻りだ。