そうならないようにするために、今緊急にできることは需要側の制限だ。そのため、政府および北海道電力は東日本大震災の時に実施したのと同じような計画停電の検討をしているとのことだ。ただ、現時点(9月9日)ではまだ具体的な実施計画は決まっていない。

 とはいえ、仮にこれが実施されたとすると、経済的な損失はさらに拡大する。東日本大震災の計画停電に伴う経済的な損失については以下のような試算があった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストの佐治信行氏が一定の前提を置いたうえで試算したところによると、1都8県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、静岡県の一部)の対象地区が3時間の停電を4月末まで続けた場合、5・4兆円、1年間のGDPの1・04%が失われる。

ロイター 2011/03/15

 実際には複雑なサプライチェーンがあり、どのような影響がでるのか試算は難しいが、ざっくり県内生産額で比較すると今回の被災地は東日本大震災の被災地の10分の1位程度になる。これを単純に当てはめると、仮に東日本大震災の時と同程度の期間計画停電が行われるとするなら、損失は年間で5000億円程度になる。

 また、仮に計画停電がなかったとしても、いま政府が呼びかけている20%の節電は現実に続いている。先程の試算に基づくなら、20%の節電によって失われる経済的な付加価値は1週間あたり1107億円だ。果たしてこれだけで済むかどうか、予断を許さない。

 ここまで試算した停電に伴う損失を合算すると累計損失額は最低でも2700億円、最大で6600億円にもなる。これはあくまでも試算だが、停電に伴う経済的な損失はこれほど膨大な数字となるのだ。「たかが電気」などと揶揄していたミュージシャンがいたそうだが、ぜひこの損失金額を見てよく考えてほしいものだ。

 ちなみに、北海道電力が泊原発の再稼働に向けた安全対策の予算は約2000~2500億円である。この損失額に比べれば安いものではないだろうか?

 北海道電力は24日、泊原子力発電所(泊村)の再稼働に向けた安全対策に2011年度から18年度までの8年間で2000~2500億円を投じると発表した。原子力規制委員会の新規制基準に対応するため、従来計画より5割ほど増やす。11月を想定していた再稼働時期については、記者会見した真弓明彦社長が「かなり厳しい」と発言し、12年5月から続く停止期間が長引く見通しを示した。


 東京工業大先導原子力研究所助教の澤田哲生氏によれば、今回の地震で泊原発が観測した揺れはせいぜい10ガル以下である。泊原発は100~300ガルの揺れを観測すると安全のため緊急停止するが、10ガル以下では全く運転に支障はない。もし泊原発が再稼働済みだったら今回の地震では停止せず運転を続けていた可能性が高い。泊原発の1号機と2号機は57・9万キロワット、3号機は91・2万キロワットの出力がある。3基とも稼働していたら出力の合計は苫東厚真石炭火力発電所の出力165万キロワットを上回る。おそらくブラックアウトもなければ、計画停電も不要だったのではないか? 仮に一時的な停電が発生していたとしても、復旧は早く被害は桁違いに少なかっただろう。
電気の復旧作業を行う作業員ら=2018年9月10日、北海道厚真町(松本健吾撮影)
電気の復旧作業を行う作業員ら=2018年9月10日、北海道厚真町(松本健吾撮影)
 今回、全電源が停止したことによって、人工透析を受けている人、ICUで処置中の人に多大なる迷惑がかかっていたと聞く。電源喪失は人の命に関わる問題であることを再認識すべきではないだろうか? 原発をタブー視して議論を避けてばかりでは何も始まらない。泊原発の地震対策について具体的に議論し、安全な再稼働を検討すべき時期に来ていると私は思う。