2018年09月11日 18:05 公開

テニスの全米オープン女子シングルス決勝戦で性差別的な扱いを受けたというセリーナ・ウィリアムズ(米国)の主張について、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は9日、ウィリアムズの言い分を支持した。

サイモンCEOは、審判を激しく非難したのが男子選手だったなら、主審はもっと寛容な態度で違った判定を下したはずだとの見方を示した。

ウィリアムズは、コーチング(指示)で違反警告を受け、ラケットを乱暴に扱いポイント・ペナルティー、主審を「泥棒」と呼びゲーム・ペナルティーをそれぞれ取られ、大坂なおみとの試合に敗れた。

ウィリアムズは、ゲーム・ペナルティーを取られたのは「性差別的」だと発言していた。

「WTAは、男女を問わず、選手が感情をあらわにした際の許容範囲は、同じ水準であるべきだと考える。決勝戦がそうだったとは思えない」とサイモンCEOは声明で述べた。

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サイモン氏はさらに、「テニス全体」でコーチングを認めるよう求めた。カルロス・ラモス主審は、ウィリアムズのパトリック・ムラトグルー・コーチが客席で手を動かしているのを見て、ウィリアムズにペナルティーを科した。ムラトグルー・コーチは後に、選手に指示を与えようとしていたと認めている。

全米オープンの主催者、全米テニス協会(USTA)のカトリーナ・アダムス会長は、男子選手が「コートチェンジ時に主審にしつこく食い下がっても、何もされない」と話した。

「男子選手の同じような真似は、しょっちゅう目にする」とアダムス会長は指摘し、「主審へのふるまいに関して、男子と女子は平等な扱いを受けていない。全体的にある程度の一貫性がなくてはいけないと思う」と述べた。

「私は男女平等を全面的に支持する。現状からして、今後数週間の間に話し合いがもたれることになると思う。お互いを平等に、同じように扱わなくては」

BBCのテニス番組司会者、スー・バーカー氏は「男子選手が審判に暴言を吐くのを何度もコートサイドで眺めてきたが、男子は警告されない」と話した。

ウィリアムズは、ラモス主審を「うそつき」や「泥棒」と呼ぶなどした規則違反で1万7000ドル(約189万円)の罰金を科された。ウィリアムズは準優勝して、賞金185万ドル(約2億534万円)を獲得している。

一方で、英国の元プロ選手、アンドリュー・カッスル氏は、サイモン氏の発言を「恥ずべき」ものだと批判した。

カッスル氏はBBCラジオ4番組「トゥデイ」に出演し、「セリーナ・ウィリアムズが女子決勝戦後の記者会見で浴びせた性差別的という非難には、裏付けが必要だ」と話した。

「さもないと、彼女は試合に不名誉をもたらしたと非難される可能性がある」

ダブルスと混合ダブルスで四大大会に10回優勝したジンバブエのカーラ・ブラック氏は、ラモス氏に同情すると述べた。

「自分の仕事をして、自分が見た内容をもとにセリーナを判定しただけ。セリーナは感情のコントロールができなくなった。性差別が関係していたとは思えない」

「セリーナはなおみ相手に苦戦していた。これまでも彼女が、状況をごり押しして対戦相手を少し威圧しようと、ああいった暴言を吐くのを何度か見たことがある」

数字からは何が見える

ウィリアムズは四大大会で23度優勝し、世界ランキング1位の経験もある。今年の全米オープンでは、規則違反で罰せられた女子選手10人のうちの1人だ。一方で男子選手は26人が罰金を科せられた。

罰金の理由として最も多いのがラケットを乱暴に扱った違反で、男子14人、女子5人だった。

ペナルティーを科せられた理由は、聞き取れる音量のわいせつな言葉が男女とも3人、遅延が男子5人、スポーツマンシップに欠ける振る舞いが男子4人、女子1人だった。

コート上のコーチングで罰せられた女子選手はわずか2人で、ウィリアムズの他にはスロバキアのドミニカ・チブルコバがいた。一方、これが理由でペナルティーを科せられた男子選手はいない。

今大会で暴言を理由に罰せられた選手はウィリアムズのみで、罰金1万ドル(約111万円)は今大会の最高額だった。

過去の全米オープンで問題

  • 2009年準決勝:試合中、ラケットを乱暴に扱ったとしてすでに警告を受けていたウィリアムズだったが、フットフォルト(サーブの際ベースラインを踏む違反)がもとでキム・クライシュテルスに2点のポイントが入ることになった。フットフォルトでマッチポイントとなった後、ウィリアムズは線審を務めていた女性に対し怒りにまかせて暴言を吐いたのだ。スポーツマンシップに欠ける振る舞いと判断されポイント・ペナルティーを取られ、試合はクライシュテルスの勝利となった。ウィリアムズには罰金17万5000ドル(当時約1530万円)が科せられ、2011年までに大きな違反をしなければ、8万2500ドルに減額されるという2年間の観察期間を設けられた。
  • 2011年決勝:サマンサ・ストーサー(オーストラリア)がリターンを打とうとした際にウィリアムズが「カモン」と叫び、ストーサーのポイントとなった。ウィリアムズはその後、エバ・アスデラキ主審に暴言を浴びせ、罰金2000ドル(約22万円)が科せられた。

ジョコビッチ 「審判はウィリアムズを限界まで追い詰めるべきではなかった」

全米オープン男子シングルス決勝で9日、フアン・マルティン・デル・ポトロを下し全米オープン3回目、四大大会14回目となる優勝を手にしたノバク・ジョコビッチ(31、セルビア)は試合後、ウィリアムズの暴言について意見を求められた。

ジョコビッチは、ラモス主審の介入が「不要」で「試合の行方を変えてしまった」との考えを示した。

「個人的には、主審はセリーナを限界まで追い詰めるべきではなかったのではないかと思う。四大大会の決勝では特に」とジョコビッチは話した。

しかしジョコビッチは、WTAのサイモンCEOの意見には賛成できないと述べ、「どういうつもりで言っているのか理解できない」と加えた。

さらに、今回の状況は主審にとって「つらい」もので、「主審の身になる必要がある」と述べた。

女子ダブルスでの議論

大坂が涙を流し、ウィリアムズが観客に向かってブーイングをやめるよう呼びかける事態となった、気まずく苦々しい女子シングルス授賞式の翌日、女子ダブルスではもっと大きな議論が起こっていた。

ダブルスで優勝したココ・バンダウェイ(米国)とアシュリー・バーティ(オーストラリア)は、男子決勝戦の直前にコートから乱暴に追い出され、トロフィーを受け取った後の優勝スピーチができなかったと言うのだ。

「感謝の言葉が言えなかった。お粗末な式だったと思う」とバンダウェイは話し、続けた。「たぶん全豪オープンではきちんと祝ってくれるのではないかな。全米ではしてくれなかったから」。

コートから追い出されたのは「男子の試合を始めなければいけなかったから」だとバーティが加えた。

さらに、「正直言って、10分や15分遅れたところで彼ら(ジョコビッチとデル・ポトロ)は気にしなかったと思うけど」と続けた。

アザレンカが「気になる」のは一貫性のなさ

ラモス主審は、ムラトグルー・コーチが客席から戦術を合図していたと判断し、決勝戦でウィリアムズを規則違反とした。

ムラトグルー・コーチは試合後、指示を認めたが、「ウィリアムズは私を見なかったと思う」と言い、「みんなやっている」と加えた。

今回の出来事は、コーチング規則の一貫性について議論を起こしている。規則では以下のように定めている。

  • 選手は、四大大会の試合中(ウォーミングアップを含む)にコーチングを受けてはならない。音声であれ視覚的であれ、選手とコーチ間のいかなるコミュニケーションもコーチングと見なされる
  • WTAツアーや同等のWTAイベントに関しては、WTAはコート上でのコーチングを許可
  • 全米オープンの予選においては、ゲームが続行中でない時に限り客席からのコーチングは可能

サイモン氏は、「WTAはコーチングの問題に取り組む必要があると考えており、テニス全体で許されるべきだと考えている。WTAはコートでのコーチング規則で、コーチングを認めている。ただし、さらなる検討が必要だ」

2度の四大大会優勝を経験しているビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は、こうした規則には「グレーゾーンがあまりにも多い」ため「気になる」と話した。

アザレンカは自分のインスタグラムのライブ動画で、「主審は行使するか否かを選べる」と述べた。「常に機能する規則にするか、規則をなくすか。それが、この件で私が問題だと思うところ」

「なぜそんなに違いがあるのか? 理解できない。明確なルールがあるべき。もしこれが男子の試合で起きていたら、もう2度と起こることはなかったと思う。それが問題。一貫性がない」

(英語記事 US Open 2018: Serena Williams' claims of sexism backed by WTA