地震による建物の倒壊で骨折したり、頭部をけがして救急搬送されてきた患者のX線撮影やCTスキャンによる頭部検査もできない。実際、外来患者の受け入れを中止した病院も多かった。手術や現在の高度な医療も電気に支えられているのだ。震災時にこそ、医療が重要になるのは言うまでもない。

 また、北海道の主力産業である酪農も打撃を受けた。乳牛の搾乳機が使えなくなると乳牛は乳房炎にかかりやすい。さらに、ミルクが絞れたとしても今度は、出荷できない。ミルクが廃棄されたことも報道されている。

 そして物流への影響も大きかった。ガソリンやディーゼルエンジンの燃料である軽油などの流通が滞り、苫小牧埠頭では、停電の影響でタンカーで運ばれたガソリンや石炭などの荷降ろしができなくなった。タンクローリーに移すにもポンプを回す電力が要る。

 長距離トラック便や、道内の鉄道貨物の輸送も停止した。物流が滞ると野菜などの農産物、乳製品の出荷もできないだけでなく、百貨店やスーパー、コンビニなどの食料品の冷凍ができなくなる。本州へ送られる収穫期のジャガイモやタマネギなどの農作物が輸送できずに山積になったという。

 一方、新千歳空港では8⽇早朝に国際線ターミナルビルの閉鎖が解除されるまで、国際線の運航が停止した。7⽇に再開した国内線は乗務員の⼈繰りなどのため36便が⽋航。約1200⼈が空港に宿泊した。9⽇にも国内線28便が欠航。JR北海道では、8⽇になっても一部の普通列⾞やすべての特急列⾞を含む855本が運休した。札幌と帯広、釧路を結ぶ特急は運休が続いた。この時期、北海道を訪れる人は多く、観光客への影響も甚大だった。
運航が再開され帰国する外国人観光客らで混雑した新千歳空港の国際線ターミナル=2018年9月8日
運航が再開され帰国する外国人観光客らで混雑した新千歳空港の国際線ターミナル=2018年9月8日
 ではなぜ、このような全道停電という事態に陥ったのか。そもそも、耐震補強を徹底的に施した原発に比べ、火力発電所は地震に弱い。ボイラーの伝熱管群は、熱膨張を避けるために垂直に数十メートルの長さがあり、上部で吊っているので今回のように直下型の縦揺れには弱いのだ。運転中は高温高圧になった伝熱管群が数十センチも下方向に伸びて下がってくるので、垂直方向には固定できない。

 このため、1、2号機のボイラーの伝熱管が損傷し、高温高圧の蒸気が吹き出した。4号機はタービンで火災が発生し、復旧にはケーシング(建具材)が冷えるまで待ち、分解点検して修理しなければならないので、修理期間は約1カ月と報じられている。その一方で、原発の燃料集合体は厚さ約20センチもある鋼鉄製の原子炉容器に収納されており、接続される配管も太く堅牢(けんろう)だ。

 つまり、最新補強工事が徹底的になされ、地震には非常に強くなっている。ソーラーパネルは台風で飛散し、風力発電所も倒壊したことが報じられている。このため、原発は現在の電源の中で最も頑健(がんけん)となった。

 マスコミ報道やインターネット上には、泊原発が震度2で外部電源が喪失し、もし運転中だったらメルトダウンして爆発する危険性があるというような意図的に原発の危険性を煽る情報がたくさん出ている。