安倍政権の特徴は、「熱烈な親安倍」と「強烈な反安倍」の罵り合いがその他大勢の国民をうんざりさせていることにある。本誌・週刊ポストで「ネットのバカ 現実のバカ」を交互連載する呉智英氏(評論家)と中川淳一郎氏(ネットニュース編集者)の2人が、この衆愚化した言論状況について語り合った。

中川:自民党総裁選で不思議なことが起きていて、野党が石破を応援し始めているんですよね。

呉:野党の誰が?

中川:立憲民主の蓮舫とか国民民主の大塚(耕平)とかが「石破さんに頑張ってほしい」と言い出して。こうした現象についてネット上でなんて言われるかというと、新潟知事選でも沖縄名護市長選でもそうだったんですが、「野党が応援し始めたら負ける」と。もう疫病神扱い。

呉:むしろ、やめてくれと。

中川:だいたい、自民党の総裁選でなぜ無関係の野党が石破を応援するのか。結局、安倍が嫌いなだけだろと思っちゃうんですよね。安倍ぎらいの人たちって、雨が降っても地震が起きても安倍のせいで、ネットでは“アベノセイダーズ”と呼ばれています。

呉:夜に盛りのついたネコがニャーニャーうるさいのも、安倍のせいか。

中川:今年の猛暑も、もう安倍のせいってことでいいでしょう。
所見発表演説会に臨む安倍晋三首相=2018年9月10日午前、東京都千代田区・自民党本部(納冨康撮影)
所見発表演説会に臨む安倍晋三首相=2018年9月10日午前、東京都千代田区・自民党本部(納冨康撮影)
呉:しかし、安倍が本気で嫌われているかというと疑問なんだよね。かつては、田中角栄が典型的だけど、日本列島改造みたいに積極的に何かをやろうとするために時には悪役も引き受ける政治家がいた。幼い頃から新潟が雪に埋もれて忘れ去られていることへの怨念があって、好きな人はものすごく好きだし、嫌いな人はめちゃくちゃ嫌う。安倍の祖父の岸信介だって、60年安保で全学連に「殺す」って言われて、実際に右翼には太ももを刺されるほど憎まれたわけでしょう。

 だけど、安倍の場合は、自慢できるのは血統ぐらいしかなくて、はっきり言って嫌われるほど大した政治家ではない。だから何かで底上げしてやらないと、憎む対象にすらならないんだ。

中川:なるほど。素っ頓狂な昭恵夫人に、お友だちの籠池理事長と教育勅語をセットにして、ようやく嫌いになれるってことですね。