加えて、安室世代にはユーミン世代にはなかったダンスパフォーマンスによるアスリートへの憧れという新しい魅力が加わっている。ダンスはいつしか学校教育の中に組みこまれたことにより、ダンスパフォーマンスのできる人は、一流アスリートと同じ尊敬の対象となった。安室は言うまでもなく、そんな素晴らしいダンスパフォーマーでもあるので「スーパースター」になり得たのである。

 ラスト・ツアー最終公演の千秋楽は、聖火台をバックに、NHKのリオデジャネイロ五輪テーマソング『Hero』で幕が開けた。1曲目から全開といった雰囲気で、歌とダンスと8変化の衣装、それこそノンストップのエンターテインメント・ショーは息もつかせぬ圧倒的なパワーだった。安室の完成度の高いパフォーマンスが光っていた。

 曲もバラエティーに富んでいた。『Don't wanna cry』『CAN YOU CELEBRATE?』など、誰もが知っている大ヒット曲から『Do it For Love』などの最新曲までをとり混ぜ、見せて聴かせて、とまさに「安室ワールド」が満開だった。それにしても、ステージの端から端まで走り抜けるタフさ、これにはびっくりした。まさにメダルを狙えるアスリートのようだ。

 あっという間の2時間45分、そして歌手人生最後のツアーを飾るラストソングは『How do you feel now?』。ちょうど30曲目となったこの曲を歌い終えると、安室は16人のダンサーと抱き合い涙を流した。そしてマイクを握った。コンサートではMCをしないことで有名な安室が、ラストということで、5万2千人の聴衆は固唾(かたず)を飲んで安室の言葉を待った。

 「今日はどうもありがとうございました」
 「9月16日以降、私がこうしてステージに立つことはありません。だからこそ、この25年間が私の中でとても大切な思い出になりました」

 安室の言葉が一言ずつ心に入ってきた。と同時に、いろいろなシーンがよみがえってきた。しかし、それも今日で終わりだ。あとは瞬間冷凍されて、それぞれの心の中で「伝説」として残っていくのだ。25年間の感動ドラマはそれぞれの心の中で永遠に残ることだろう。
安室奈美恵のラストツアーDVD&ブルーレイ「namie amuro Final Tour 2018 Finally」が発売され、JR渋谷駅前に登場した巨大PR看板=2018 年8月29日、東京・渋谷(早坂洋祐)
安室奈美恵のラストツアーDVD&ブルーレイ「namie amuro Final Tour 2018 Finally」が発売され、JR渋谷駅前に登場した巨大PR看板=2018 年8月29日、東京・渋谷(早坂洋祐)
 安室奈美恵のそんなドラマチックな25年間を凝縮したのが8月29日にブルーレイディスク(BD)とDVDが各5バージョンで発売された「namie amuro Final Tour 2018~Finally~」だ。これを見ることで、私たちはいつでも瞬間冷凍された「安室伝説」を解凍することができるのである。