2018年09月17日 16:02 公開

ジェイムズ・ギャラガーBBC医療科学担当記者

米豪における大規模調査で、健康な高齢者は毎日1錠のアスピリンを常用するべきではないという結果が出た。

1日1錠のアスピリンは、心臓発作や脳梗塞(のうこうそく)の発症後に有効だと立証されている。しかし今回の治験では、70歳超の健康な人にとって日常的なアスピリン服用は特に効能がないことに加え、危険な内出血を引き起こす可能性が高まることが分かったという。

16日付の医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に掲載された調査報告について、多くの専門家は重要な内容だと評価し、人が自己判断でアスピリンを常用するのは危険だと警告している。

心臓発作や脳卒中を発症した人に、血栓形成抑制作用のあるアスピリンを処方することは、再発防止方法として広く定着している。

これに加えて、予防策として健康な人もアスピリンの常用を勧められることがあるほか、がん発生を抑える効果があるかどうかの研究も続いている。

しかし、アスピリンの効能を調べる調査の大半は中年期の人を対象に実施されたもので、加齢が進むと副作用の危険が高まることを示す証拠が増えつつある。

「メリットなし」

調査は、米国とオーストラリアに住む、心臓病歴のない健康な70歳超の1万9114人を対象に行われた。

半数の人が低用量のアスピリンを5年間、服用した。

NEJMに掲載された論文3本によると、アスピリンを常用しても心臓病の発症リスクは下がらず、それ以外の効能も認められなかった。

その一方で、重篤な腹部内出血の症例は増加した。

豪モナシュ大学のジョン・マクニール教授は、「世界中で医療上の理由がないまま低用量アスピリンを取り続けている、何百万人もの健康な高齢者は、そうする必要がないのかもしれない。内出血のリスクを上回るような、服薬のメリットは認められなかった」と説明する。

「健康な患者にアスピリンを勧めたものかどうか、ずっと確信がもてなかった医師に、参考になる調査結果だ」

調査では、がんで死ぬ人が被験者の間で多く見られたが、これはアスピリンとがんの関係に関する現行研究と逆の結果なので、さらなる調査が必要だと研究チームは受け止めている。

アスピリン研究の第一人者、英オックスフォード大学のピーター・ロスウェル教授は、今回の調査結果は決定的なものだと評価する。

「70歳超で健康で、これまで心臓病も脳卒中も経験していないなら、アスピリン服用にはほとんど何の効能もない」とロスウェル教授は言う。「なので、具体的な症状がないのに自己判断でアスピリンを飲むのは、お勧めできない」。

心臓発作や脳卒中を理由にアスピリンを処方されている人は、今回の調査結果にあてはまらない。引き続き、医師の助言に従うべきだ。

また低用量アスピリンをもう長いこと飲み続けてきた人は、ただちに中止すると問題が生じることもあるため、すぐにやめるのではなく、医師に相談するべきだとロスウェル教授は呼びかけている。

(英語記事 'Aspirin-a-day risky in old age' - major study