2018年09月17日 16:45 公開

ロンドンのサディク・カーン市長(労働党)は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)についてメイ政権の対応を批判し、ブレグジットの是非をあらためて国民に問うべきだと主張した。

15日付の英紙オブザーバーに寄稿したカーン市長は、来年3月29日の離脱期日を半年後に控えた状況で、英国は「悪い合意」か「合意なし」の二者択一に直面していると書いた。

さらに、ブレグジットをめぐる議論はもはや、英国にとって何が良いのかよりも、「ボリス・ジョンソン(前外相)の政治的野心」が話題の中心になっていると批判した。

これに対してブレグジット推進派のマイケル・ゴーブ環境相は、カーン市長が有権者の意志を妨害しようとしていると反論した。

市長の発言は、所属する最大野党・労働党の公式方針とも異なっている。労働党は、ブレグジットに賛成した国民投票の結果を尊重しつつ、もし議会が離脱案に合意しなければ、「あらゆる選択肢を残す」方針を掲げている。

ロンドン南部トゥーティング選出の下院議員からロンドン市長に転身したカーン氏は、国民投票前は残留派として運動したものの、「EU離脱が英国民の意志」だと受け入れていたと書いた。

そのためこれまでは、2度目の国民投票を求める意見にこれまで賛同するつもりはなかったが、「混沌(こんとん)とした離脱交渉の取り組みが、混乱と膠着(こうちゃく)にまみれてしまっているのを見て、危機感を強めるようになった」という。

英政府は来年3月までにEUと、離脱後の関係について最終的な取り決めを交わさなくてはならない。あと半年と期限が迫るなかで、英国には「とてつもなく危うい」選択肢しか残されていないとカーン市長は指摘した。

「どちらのシナリオも、国民投票前に提示されたものとはあまりにかけ離れている。投票前に国民がいかに嘘をつかれ、事実をごまかされていたか、今まで以上に明るみに出た」と市長は寄稿した。

「英国経済と国民の暮らしについて、これほど甚だしい賭けに打って出ていも良いなどと、テリーザ・メイ(英首相)が信任を得ているとは思えない」

「やり直しではなく」

16日朝にBBCの「アンドリュー・マー・ショー」に出演したカーン市長は、2016年6月のブレグジット国民投票の後に、投票をやり直したりしたら有権者はますます「懐疑的になる」と警告したラジオでの発言を、アンドリュー・マー司会者に見せられた。

それに対して市長は、自分が求める2度目の投票は「国民投票のやり直しではなく、その結果について英国民が初めて意見を表明できるようにするのが、本当に大事だ」と述べた。

新しく国民投票をするなら何を有権者に問いかけるべきかとの質問には、政府の離脱案とEU残留のどちらかを選ぶようにするべきだと市長は答えた。

それを実現した場合、「ハード・ブレグジット(EU単一市場を抜けてでも、人の自由移動などで妥協しない強硬な離脱)」の支持者にとって不利ではないのかと尋ねられると、市長は「悪い合意か合意なしのどちらかになるよりは、それとEU残留のどちらがいいか、英国民に聞いてみよう。それが私の言いたいことだ」と答えた。

ロンドン市長がブレグジットに発言することで、刃物犯罪の増加や住宅、交通対策などロンドン市政の問題から市民の目をそらそうとしているのではないかという指摘については、カーン市長は批判を一蹴した。

推進派閣僚は反発

同じ番組に出演したゴーブ環境相は、カーン市長の発言は「気がかりだ」と述べた。

「国民ははっきり投票した。1740万人が、欧州連合を離脱すべきとはっきり投票した。サディクは要するに、『待った、離脱プロセスを遅らせよう、混沌状態に投げ込もう』と言っているに等しい。それはとてつもない過ちだと私は思う」と、強力な離脱推進派のゴーブ氏は市長を批判した。

これとは別に、野党・自由民主党のジョー・スウィンソン副代表は、労働党のジェレミー・コービン党首がブレグジットについて「政府のやることなすこと全てを支持している」と批判した。

「ジェレミー・コービンは首相を無罪放免にしている。私は彼に言いたい。しゃんとしなさい。あなたに投票した何百万人のために立ち上がり、ブレグジットを阻止するため私たちを手伝ってほしい」と、副代表は年次党大会で演説した。

自由民主党は2度目の国民投票を求めており、党の方針に不満を抱くブレグジット反対派の労同党議員や与党・保守党議員たちと協議している。

また労働党内では、2度目の国民投票を求める議員・党員たちが、党綱領の変更を目指しているという指摘もある。

一方で、テリーザ・メイ首相は今月1日の英紙サンデー・テレグラフに寄稿し、2度目の国民投票を政府は認めないと書いた。

「同じ質問を最初からやり直すのは、この国の民主主義をひどく裏切ることになるし、信任を裏切ることになる」と首相は書いていた。

(英語記事 London mayor Sadiq Khan calls for second Brexit vote