2018年09月18日 16:46 公開

米連邦最高裁の判事候補、ブレット・キャバノー高裁判事(53)について、10代のころに性暴力被害に遭ったと女性が名乗り出たことを受け、上院司法委員会は承認手続きを延期し、両者の証言を聞く公聴会を24日に開くことになった。同委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党)が17日、発表した。

現在はカリフォルニア州のパロアルト大学で心理学を教えるクリスティーン・ブレイジー・フォード教授(51)は16日付の米紙ワシントン・ポストに対して、1982年にキャバノー氏が自分をベッドに押さえつけて服を脱がそうとしたと話した。

キャバノー判事は、このような主張は「まったく事実と異なる」と反論している。

引退する現職判事の後任に、ワシントン特別区高裁判事のキャバノー氏を最高裁判事に指名したドナルド・トランプ米大統領は、承認手続きが「少し遅れる」ようだと話した。

上院司法委のグラスリー委員長は、「前にも申し上げた通り、フォード博士のように名乗り出る人は誰だろうと、発言の機会を与えられるべきだ」と述べ、公聴会開催の予定を確認した。グラスリー委員長はこれまで、性的暴行問題での公聴会開催について言明を避けていた。承認決議案を本会議に送付するかを決める委員会採決は20日に予定されていたが、それを延期するかどうかも、委員長は明確にしていなかった。

最高裁判事候補に10代のころに強姦されそうになったと主張するフォード教授は、キャバノー判事の指名が発表されるとカリフォルニア州選出の民主党議員に接触し、手紙で概要を説明した。9月4~7日に上院司法委の承認公聴会が開かれた後、上院の民主党議員団が13日に、判事が高校時代に女子生徒を暴行しようとしたという疑いを調べていると明らかにした。キャバノー判事が翌日に否定声明を出すと、それまで匿名を希望していたフォード教授は実名を出し、上院での証言にも応じる姿勢を明らかにした。

グラスリー委員長は16日の時点では、民主党筆頭委員のダイアン・ファインスタイン上院議員と共に電話で、キャバノー判事とフォード教授に聞き取りをする方針を示していたが、民主党がこれを拒否。ファインスタイン議員ら民主党は、連邦捜査局(FBI)の取り調べを要請し、その間は承認手続きに関する委員会採決を延期するよう求めていた。

一部の共和党上院議員も、フォード教授の証言や採決延期に賛成していた。

メイン州選出のスーザン・コリンズ上院議員は記者団に、フォード教授の主張が信用できるかどうか自分で判断するため、本人が証言する様子を観察する機会が欲しいと話した。

「もちろん、何があったのかについてもしキャバノー判事がうそをついているとしたら、欠格の理由になる」とコリンズ議員は述べた。

ほかにも共和党のジェフ・フレイク上院議員(アリゾナ州選出)とボブ・コーカー上院議員(テネシー州選出)も、採決の延期を求めていた。

連邦最高裁は米国の市民生活に重要な影響力を持つ。人工中絶、死刑制度、投票権、移民政策、政治資金、人種偏向のある警察の行動など、激しい賛否両論のある法律について最終判断を示すほか、連邦政府と州政府の争いごとや、死刑執行停止の請求などについても最終判断を示す。最高裁判事は終身制で、死去もしくは引退するまで地位が保障される。

女性の主張内容

フォード教授は7月、地元カリフォルニア州選出で司法委民主党幹部のファインスタイン上院議員に、詳細な被害内容を手紙で書き送っていた。

それによると、ワシントン郊外のメリーランド州の住宅地で36年前、男子進学校に通う当時17歳のキャバノー氏と、近くの高校に通う15歳の自分が、一軒家に若者が集まるパーティーで一緒になった。キャバノー氏は友人と共に、フォード氏を寝室に連れ込み、ベッドに押し倒してフォード氏の服を脱がそうとした。大音量で音楽を鳴らし、悲鳴を上げられそうになると、手で口を押さえたという。

フォード教授は、男子は2人とも酔っていたと説明している。その場を逃げ出したが、「(キャバノー判事が)うっかり自分を殺してしまうかもしれないと思った」という。さらに教授は、ワシントン・ポストに対して、この出来事について長年にわたり、心理セラピーなどの場で語ってきたと述べている。

教授を担当するデブラ・キャッツ弁護士は17日、NBCニュースの番組で、「ブレット・キャバノーが甚だしく酔っ払っていなければ、(フォード教授)は強姦されていたはずだ」と述べた。

その場にいて一部始終を見ていたと名指しされたマーク・ジャッジ氏は、米誌ウィークリー・スタンダードに対して、教授の言い分は「まったく頭がおかしい」と反論した。

キャバノー判事は17日に声明で、「私を責める人が言うようなことを、自分は一度たりともやったことがない。彼女にも、ほかの誰に対しても」と否定した。「まったくなかったことなので、本人が昨日名乗り出るまで、いったい誰がこのような糾弾をしているのか、検討もつかなかった」と述べ、自分に対する糾弾内容を司法委員会の前で「反駁(はんばく)」するつもりだと表明した。

何にどう影響するのか

新しい最高裁判事を決める際には、大統領が指名し、上院(定数100)が承認する。現在の上院は51対49で共和党が多数を占めるが、僅差なだけに共和党議員が数人でも反対すればキャバノー判事の承認は否決される。

そうなれば、最高裁をはじめ米各地の裁判所に保守派判事を送り込もうというトランプ政権の取り組みが、妨げられることになる。

一方で、キャバノー判事が承認されれば、最高裁は大きく保守傾向に傾く可能性がある。現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成になっている。最高裁判事の任期は終身なだけに、最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。

米国では11月6日の中間選挙で、民主党が上下両院の多数党に返り咲くのか注目されているだけに、このタイミングでトランプ氏が押す最高裁判事を承認するのかどうかは、大きな争点となっている。

トランプ氏を支持する保守派の法曹団体は、150万ドルをかけてキャバノー判事の応援キャンペーンを展開する方針を明らかにした。

ホワイトハウスの反応は

女性に対するわいせつ発言が明らかになったり、複数の女性から性的加害行動の被害を訴えられているトランプ大統領は、キャバノー判事の過去について進んで言及していない。

17日にはホワイトハウスで承認手続きについて、「もし多少遅れるなら、多少遅れるまでのことだ」と述べた。

記者の1人が、キャバノー判事の指名を撤回するつもりはあるのかと尋ねると、「ばかばかしい」と一蹴し、「(承認の)道筋は順調だ」と自信のほどを見せた。

ホワイトハウスは声明で、「キャバノー判事は虚偽の主張について自分の名誉を回復するため、公聴会に前向きに臨むつもりだ」とコメントしている。

(英語記事 Kavanaugh and accuser to testify in Senate