しかし、完全な民間人だったダニエル王子との交際は、当初王室からも社会からも強く反対されました。一部では「無愛想」「田舎者」というダニエル王子への中傷も飛び交いました。ですが、ヴィクトリア王女の元気で幸せな姿にいつしか王室も社会も、ダニエル王子を迎え入れられるようになりました。

 この間の王子の努力も並々ならぬもので、立ち振る舞いから服装、マナー、英語・仏語・独語の習得や美しいスウェーデン語の話し方、そして歴史や公務に関する教養を積んでいったのです。こうして2009年2月24日、ヴィクトリア王女とダニエル王子の婚約が正式に認められました。

 昨年の夏。なんと、ヴィクトリア王女夫妻そしてマデレーヌ王女と同じ飛行機に乗り合わせました。

 遅い時間だったとは言え、専用機などではなく、ごく普通の便に乗っていたことにまず驚きました。さらには、御一行がなんと私達に混じって荷物受取り場で待たれていたのです。ボディーガードはもちろんいましたが、たった3席ほど離れたベンチに座ってみても警戒する気配もありません。

 あたかもそれが当然かのような大衆的な姿には、やはりとても親近感が沸きました。一方で一般の人々も、興奮の空気は漂っていたものの、大騒ぎしたり写真を撮ったりするような人はいませんでした。個人の人権を思う気遣いが、なんともスウェーデン人らしく素敵だなと思った瞬間でした。

2017年4月、スウェーデンのヴィクトリア王女を
出迎えられる皇太子さま=東京・元赤坂の東宮御所(代表撮影)
 日本の皇室もスウェーデンの王室も、国の象徴としてとても大きな役割を担っています。しかし、世界で民主主義化が進む中、どの国でも従来の社会体制は成り立たなくなってきており、スウェーデンでも国民の王室離れに対する危機感は年々増しています。

 そのような中、ベルナドッテ王朝初の女性元首であり、民間人と結婚したヴィクトリア王女は、この風潮を変える切り札として期待されています。エステル新王女の誕生によって今後2代王女の即位が続くことも、スウェーデン王室にとっては一つの大きな転換点となるかもしれません。

 彼女たちが、国民との間に強い「絆」を結び、王室の存在感をどのようにして高めていくのか。スウェーデン国内のみならず、皇位継承問題を抱える日本の関心も集めるでしょう。