2018年09月21日 13:06 公開

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は20日、英国が欧州連合(EU)を離脱(ブレグジット)した後の英・EU関係について、テリーザ・メイ英首相が提案した新たな経済パートナーシップ案は「うまくいかないだろう」と述べた。

19日からオーストリア・ザルツブルクで行われていたEU加盟国首脳会議(サミット)後の記者会見でトゥスク氏は、提案はEUの単一市場を脅かすものだと話した。

一方でメイ氏は北アイルランドと、EU加盟国アイルランドの国境管理厳格化を避ける「唯一のまともで信用できる」方法だとしている。

メイ首相はトゥスク氏と「腹を割って」協議したと述べた上で、「確かに懸念は持ち上がった。懸念の内容を知りたい」と話した。

「やるべきことはたくさんある」が、英国は合意なしで離脱となった場合の準備も進めているという。

メイ氏は、北アイルランドとアイルランドの国境強化を避けるためのEU側の「防御策」は受け入れられないと繰り返した。近く、英国側から案を提出するとしている。

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2019年3月29日のEU離脱期日を前に、英国とEUは合意に至る努力を続けている。

北アイルランドとアイルランドの国境管理方法など、いくつかの問題についてはなお両者が一致していない。

7月に英首相の公式別荘「チェッカーズ」で閣内合意に至ったメイ首相の提案は、モノの移動にだけEUの共通ルールブックを適用し、EU域外から英国経由でEU加盟国に到達する輸入品にかかるEU関税を英国が徴収するというもの。人やサービスを含めた単一市場を目指すEUの方針に反しているとして、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官などがかねて反対していた。

記者会見でトゥスク議長は、英国がEUとの将来の関係性を示した方針にはいくつかの「前向きな要素」があると述べた。

しかし「提案された経済協力枠組みは機能しないだろう」と付け加えた。

トゥスク氏はさらに、10月の協議が合意に至る「決定的瞬間」となり、「もし条件がそろえば」11月にもう1度EUサミットを行って合意を「正式なものにする」と話した。

「大きな前進が必要」

今回のサミットでは、メイ首相案を残りの27カ国の首相が協議した。

アンゲラ・メルケル独首相は、10月の欧州理事会までに離脱合意に至るには「大きな前進」が必要な上、ブレグジット後の英・EU間の通商協定についても「まだ大仕事が残っている」と述べた。

また、27カ国は「単一市場については一切妥協しないことで一致している」と強調した。

エマニュエル・マクロン仏大統領は、ブレグジットは「簡単に解決できるはずだと予想した一部の人たちがごり押しした」ものだと話した。

「ブレグジットはあることを教えてくれた。英国の主権を完全に尊重した上で申し上げるが、欧州なしでも簡単にやっていける、全てはうまく行く、簡単だし、たくさんお金が手に入ると言った人たちは嘘つきだということだ」

「あの人たちは自分たちが取り組まなくて済むよう、(ブレグジットが決まった)翌日にさっさとやめたのだから、なおさらだ」

メイ首相の提案は、EUからの批判だけでなく、英国の与党・保守党内でも不評だ。与党内からは、これが英国の主権を侵害しているだけでなく、2016年の国民投票で離脱派が支持した内容と異なっているとの声があがっている。

デイビッド・デイビス前EU離脱相は、EU首脳たちは「温かい言葉をかけようとしていた」ものの、その要求に応えるのは「とても、とても難しい」ため、「リセットし、考え直す時だ」と述べた。

離脱派のジェイコブ・リース=モグ下院議員は、トゥスク氏の発言はチェッカーズ案の終わりを意味していると話した。

同議員はBBCに対し、「チェッカーズ案は支持者が誰もいないのではないか」と語った。

「メイ首相が『これはうまくいかない』と言うべき時が来たのだと思う」

最大野党・労働党で影のEU離脱相を務めるサー・キアー・スターマーは、メイ氏は「すぐに無謀な計画を破棄し、ブレグジットに向けた信頼性のある計画を持ってくるべきだ」と述べた。

一方、メイ首相と閣外協力している民主統一党(DUP)のナイジェル・ドッズ副党首は、EUの「無分別で柔軟性のないやり方」を非難し、「英政府はいじめに屈指ないという確固たる決意を見せ付けるべきだ」と話した。

ドッズ氏はさらに、「英国の政治的、憲政的、経済的な一体性」を守ることは「我々の絶対的な優先事項だ」としている。

スコットランドのニコラ・スタージョン第一首相は先に、もし将来の通商協定について詳細が決まらなかった場合、メイ首相はEU離脱の期日を来年3月から延長するべきだと発言している。


分析>――ローラ・クンスバーグBBC政治担当編集長

メイ首相は本当に、チェッカーズ案にしがみついていられるのだろうか?

EUは明らかに、今のままではこの案を受け入れないはずだ。英保守党内でもかなりの人数が賛成しないし、野党がメイ氏を支持することはない。

もちろん、戦術的な駆け引きが行われている。英閣僚の1人はすでに、EUは常に大上段に構えて実力以上に強気に出てくるものだという見方を示した。

交渉の場では時に、意識を集中させるために危機が必要だ。

メイ首相は記者会見で、自分の案が正しく消化、あるいは考慮されていないと苛立っているように見えた。

今回のサミットは、入り組んだ長い離脱プロセスにおける、たった1日、1つの危うい会議だ。

しかしメイ首相としては、譲るか立ち去るか、どちらかを選ばなくてはならないようだ。


(英語記事 Tusk: May's Brexit plan won't work