そして、それから19年たった今年の6月13日、つまり米朝首脳会談の翌日に都内での講演で河野氏は「植民地問題の処理もできていない国に、ただ(拉致被害者を)『返せ、返せ』と言っても問題は解決しない。国と国の関係を正して、返してもらうという手順を踏まざるを得ない」と言った。

 北朝鮮は、暴力的あるいは騙して日本国民を北朝鮮に送り込んでいるのである。その相手から力ずくでも取り返せず、取り返すためには北朝鮮に「植民地問題の処理」なるものをして礼を尽くして返していただく、というのである。

 平成11年のときはさすがに「植民地問題の処理」とは言わなかったが、「テーブルに着いて話し合わなければ、糸口がつかめない。どうしたら話し合いの場をつくれるか…」と述べ、ともかく話し合いで、という点は変わらなかった。結局、この人には政治家としての根本的なものが欠けているのだ。そのことは次の言葉からも分かる。

  「外務省も皆さんと同じ気持ちでやるのだから、座り込みなどはやめて、外務省にはっきり言ってくれ。いい加減な交渉はやらない。一生懸命やる。座り込みはやめてくれ」

 要は、外務大臣として拉致被害者家族に会ったのは、その問題が重要だったと思ったからではない。座り込みをされて内閣支持率や自分の威信に傷がつくのを恐れたということだ。

2018年9月、浅利慶太さんのお別れの会に
参列した森喜朗元首相(左)と河野洋平元衆院議長(斎藤良雄撮影)
 今、こういうときに「植民地問題の処理」を持ち出すというのは加齢による判断力の低下もあるのだろうが、逆に言えば本音であるとも言えよう。しかし、「力ずくではダメ」という意味で言えば与野党含め現在の国会議員の大部分は河野氏と大差ない。

 平成14(2002)年9月の小泉訪朝で金正日(キム・ジョンイル)が拉致を認め謝罪するまでは、日本の中に多数の「北朝鮮は拉致などしていない」という勢力がいて、国会議員でも動いてくれていた人はごく一部にすぎなかった。

 中山正暉(まさあき)第1次拉致議連会長のように最初は威勢が良かったが、平壌に行って戻ってきたら180度言うことが変わって、「元工作員の言っていることは信用できない」とか、北朝鮮の代弁をするような発言をしていた人もいた。そういう勢力はほとんどいなくなったが、「拉致被害者を力ずくで取り返せない」という現状を認めている点では、今の国会議員も河野洋平氏と大同小異なのではないか。