田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 2017年初頭から始まった、いわゆる「モリカケ問題(森友・加計学園問題)」で、安倍晋三首相夫妻に何か「汚職」めいたものがあることをにおわし、それをあおったマスコミの報道は、要するにこの政権の改憲志向を許容できない勢力の政治的な動きであったと思う。当面は、自民党総裁選や来年の参院選での安倍政権の終焉(しゅうえん)、百歩譲って首相の政治的求心力の低下を図るのが、この反安倍勢力の目指すところだろう。

 取りあえず、総裁選は、安倍首相が3選を果たしたが、この総裁選を契機にして安倍政権のレームダック(死に体)化が始まるとする観測や、石破茂元幹事長の善戦をしきりに報道するメディアや識者が多い。それらは、実は総裁選前から仕込まれたネタでしかないだろう。つまり、「何が何でも反安倍」という価値判断から出てくるものでしかない。

 こう書くと、反安倍系の人たちはすぐに「安倍擁護」「安倍御用」なる批判をするのであるが、筆者は、残念ながら安倍政権のマクロ経済政策の骨格に積極的評価を与えているだけである。政策ベースでの評価でしかないのに、それで「御用」と見なすならば、批判する側がカルト化しているだけだろう。

 そんな良識もないままカルト化したり、そして特に確証もなくいまだにモリカケ問題の「疑惑」が解消されないと信じている世論が一部で存在している。反安倍系マスコミや識者の生み出した負の遺産は深刻である。

 今回、筆者は安倍3選の報道を、少し空間的に距離を置いて台湾から見ていた。その台湾の蔡英文総統や米国のトランプ大統領らが、安倍3選にツイッターで積極的な賛辞を贈る中で、安倍政権に対する日本のメディアのゆがんだ報道にはやはりあきれ果てるしかなかった。

2018年9月23日、ニューヨークでの
夕食会を前にトランプ米大統領(右)の出迎えを
受ける安倍首相(内閣広報室提供・共同)
 総裁選前夜のテレビ朝日『報道ステーション』では、安倍政権への支持を占うには、党員票が55%を超えることが注目点であると、ジャーナリストの後藤謙次氏が発言していた。要するに、この55%を超えないと党員(世論の一部)と永田町(国会議員)の間に政治的意識の開きがあることになり、また石破氏の今後の政治生命にも関わるだろう、というのが報ステの伝え方であった。

 ふたを開ければ、国会議員票は石破氏73票に対し、安倍首相332票と、首相の占有率は81・8%に上った。また、党員票は石破氏181票で、224票であった安倍首相の占有率は55・3%を占めた。この「党員票55%」というのは、安倍政権に批判的なマスコミや識者が設定した高めのハードルだったと思われる。

 ところが、このハードルを安倍首相が超えても、日本のマスコミでは石破氏の善戦や、党員票獲得で首相側が苦戦したと伝えるものが多かった。客観的に見てもダブルスコアの得票差であり、まさに首相の地すべり的勝利と言っていい。