原田隆之(筑波大教授)

 人気アイドルグループ「モーニング娘。」元メンバーでタレントの吉澤ひとみ容疑者が、酒気帯び状態でひき逃げしたとして、自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道交法違反の罪で起訴された。酒を飲んだ後にひき逃げをしたというだけでも十分ショッキングな事件だが、その後の報道でさまざまな事実が明らかになるにつれ、ショックを通り越し、怒りを禁じ得なかった人も多いのではないだろうか。

 まず、吉澤被告は事件の15分後に自ら110番通報したというが、すぐに停止しなかったのは、停車するスペースがなかったからだと言い訳をしていた。また、飲酒量についても過少申告し、後になって供述を変えたという。

 さらに、極めつけは、ひき逃げの瞬間の動画が公開されたことだ。これを見る限り、相当なスピードで信号無視をし、横断歩道を渡っている女性をはねたことがはっきり分かる。報道によると、法定速度を約20キロ超える時速86キロで走行していたという。しかも、一度ブレーキランプが点灯したものの、その後は制止しようとした人を振り切って、むしろ加速してその場から逃げていた。

 また、路肩にはほとんど停車中の車はなく、止まろうとすればすぐに止まることはできたはずで、嘘をついたのは明白だ。事故の直後で気が動転していたのは分かるが、ひき逃げという悪質さに加え、その後の言い訳や嘘の数々に至っては、醜悪としか言いようがない。

 その他にも吉澤被告の行動に関しては、首をかしげたくなる点が多かった。例えば、事故当時、車で仕事に向かっていたとのことだが、朝から仕事だというのに、酒が残るほど深酒をしていたことだ。

 また、そんな状態であるにもかかわらず、車で仕事に行こうと考えたことも不思議だ。タクシーを使うなり、マネジャーに連絡するなり、他の手段はいくらでもあるだろう。

 しかも、彼女は交通事故で実弟を亡くしているという。そんな痛ましい経験を持つ者が、どうして平気で酒気帯び運転などできるのだろうか。そして、事故後も平気で嘘を重ねることができるのだろうか。

 これらの答えは簡単である。それは、彼女が「アルコール依存症」に陥っている可能性が極めて高いからだ。実際、飲酒運転で事故を起こした人の大半が、アルコール依存症だという調査結果もある。
道交法違反罪などで起訴された吉澤ひとみ被告
道交法違反罪などで起訴された吉澤ひとみ被告
 アルコール依存症の簡単なスクリーニングテストとして知られる「久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)女性版」によると、「飲酒しながら仕事、家事、育児をすることがある」、「自分の飲酒についてうしろめたさを感じたことがある」、「せめて今日だけは酒を飲むまいと思っていても、つい飲んでしまうことが多い」などの項目があり、一つでも当てはまると「要注意群」とされている。

 吉澤被告の場合、今回の事件を見ると、上記の項目にすべて当てはまる可能性が高いため「アルコール依存症の疑い濃厚」と判断できる。

 また、世界保健機関(WHO)のアルコールスクリーニングテスト「AUDIT」では、「あなたの飲酒により、あなた自身や他の人がケガをしたことがありますか」という項目があり、これだけで4ポイント(8ポイント以上が危険性が高い飲酒者)と大きな加算となる。他に本件から簡単に推測できる項目を加算し、飲酒量や頻度などを合わせて集計すると、それらを最低限度に見積もっても、吉澤被告の場合「危険な飲酒レベル」となる。