仲新城誠(八重山日報編集長)

 沖縄県知事選は故翁長雄志前知事の後継者である前衆院議員、玉城デニー氏と、自民、公明、維新が推薦する前宜野湾市長、佐喜真淳氏の激戦だ。本土からは「オール沖縄」対自民党の戦いという構図で見られることも多いが、実は地元では沖縄メディアも含め、玉城氏の支持勢力を「オール沖縄」と呼ぶ機会は少ない。「オール沖縄」という言葉は、ほかならぬ沖縄で急速に死語と化しつつある。

 「オール沖縄」を自称する政治家たちは確かにまだ存在する。「オール沖縄会議」という団体もある。だから固有名詞としての「オール沖縄」は今でも使われているが、概念としての「オール沖縄」がもはや成立し得ないことは、沖縄では周知の事実となっている。

 翁長氏の支持勢力は「オール沖縄」と呼ばれた。しかし、翁長県政の末期、その概念が虚構であることは、支持者自身も重々承知していた。それでも翁長氏の存命中は「オール沖縄」を名乗ることが許される雰囲気があった。だが、翁長氏の死によって「オール沖縄」は事実上、とどめを刺された。

 選挙期間中、私は何度か佐喜真、玉城両候補の演説を聞いたが、佐喜真氏はもとより、玉城氏の口からも「オール沖縄」という言葉はほとんど出なかった。沖縄の県紙の記事や見出しにも、この言葉はめったに登場しなくなった。翁長氏が初当選した2014年の知事選とは、全く状況が異なる。

 そもそも「オール沖縄」とは何か。

 私の見たところ、この言葉には二つの意味がある。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に対し「県民はオール沖縄で反対だ」というニュアンスで使われる場合だ。これは2013年1月、県内全41市町村の首長が連名で安倍晋三首相に対し、同飛行場の県内移設断念などを求める「建白書」を提出したことがきっかけである。
翁長雄志知事(左)と安倍晋三首相(右)のコラージュ(共同)
翁長雄志知事(左)と安倍晋三首相(右)のコラージュ(共同)
 しかし、翌年の知事選で状況は変わり、県内11市のうち、保守系市長が在任する9市は「反翁長」のスタンスを鮮明化。「オール沖縄」に対し「チーム沖縄」と名乗るようになった。その後の市長選で9市のうち名護市と南城市が入れ替わったが、現在でも9市は「反翁長」勢力で、安倍政権に近い。

 だから、沖縄が辺野古反対一色に塗りつぶされているという意味での「オール沖縄」という言葉は、とうの昔にうそであることが証明されている。本土の人たちは、辺野古移設反対勢力が「オール沖縄」と名乗るだけで「沖縄は本当に大丈夫なのか」と懸念するが、移設反対が「オール沖縄」でないことは、誰よりも県民自身がよく理解している話だ。