石垣市の中山義隆市長は「『オール沖縄』と称する勢力は共産党が主導しており、アイデンティティーよりイデオロギーになっている」と指摘する。共産党や社民党、労働組合などが発言力を増す中で「オール沖縄」は元自民党沖縄県連幹事長の翁長氏が総帥であるということ以外「保革共同体」と呼べる要素がほぼ皆無になってしまった。県議会では翁長県政を公然と「翁長革新県政」と呼ぶ議員も現れた。

 「オール沖縄」の崩壊を決定づけた直接的な動きは、自民、公明、維新による「保守中道勢力」の結集が進んだことだ。前回知事選で自民は仲井真氏を推し、公明は自主投票、維新は下地幹郎衆院議員を事実上支援と、対応はバラバラだった。その三者がまとまったインパクトは大きかった。「オール沖縄」に取り込まれていた保守中道層が「復帰」し始めたのだ。

 これにより「翁長知事」の誕生以降続いた「オール沖縄」対「自民」の構図が「オール沖縄と称する革新」対「保守中道」の構図に塗り替えられた。今年の名護市長選、石垣市長選は、自・公・維の「保守中道」が「オール沖縄と称する革新」に完勝。集票マシンとしての「オール沖縄」が機能不全に陥ったことが明らかになった。

 保守系企業も「オール沖縄」の革新色に反発し、距離を置き始めた。「かりゆしグループ」は、オーナーの平良朝敬氏が沖縄観光コンベンションビューロー会長に指名されていたが、今年4月に「オール沖縄」を離脱。知事選での自主投票も決めた。金秀グループの呉屋守将会長も名護市長選敗北後の3月に「オール沖縄会議」の共同代表を辞任し、知事選で翁長氏の後継候補となることも辞退した。両グループの離脱は「オール沖縄」瓦解(がかい)を強く印象づけた。

 「オール沖縄」の致命傷になったのは、改めて言うまでもなく8月の翁長氏死去である。「オール沖縄」の「保守」を代表するほぼ唯一の顔を失った。玉城氏は翁長氏後継として優秀な候補者には違いないが、翁長氏ほど保守層をつなぎとめる求心力はないとされる。知事選で、保守中道を支持基盤とする佐喜真氏の基礎票は、革新を支持基盤とする玉城氏を上回る。佐喜真氏が勝利するなら、その勝因は、単純に数の力だろう。
記者会見する沖縄県の翁長雄志知事=2018年7月27日午前、沖縄県庁(共同)
記者会見する沖縄県の翁長雄志知事=2018年7月27日午前、沖縄県庁(共同)
 玉城氏が勝利するなら、それは無党派層の取り込みに成功したからであり、翁長氏のように「オール沖縄」の構築に成功したからではない。

 「オール沖縄」は、もはや存在しない。今どき大まじめで「オール沖縄」などと叫ぶ政治家や評論家は、それだけで恥ずかしい、というのが私の感覚だ。

 本土の保守派からは「知事選を機会に、オール沖縄の欺瞞(ぎまん)を暴いてほしい」という要望がよく届く。しかし、何も心配するには及ばない。「オール沖縄」は、沖縄ではすでに亡霊だ。知事選で誰が勝者になったとしても、もうよみがえることはないだろう。