しかし、オール沖縄は安倍首相に提出した建白書を金科玉条のように大切にし、建白書を実現する知事候補として、翁長氏の擁立に動き始める。6月、那覇市議会の自民党新風会は那覇市役所で翁長氏と面談し、知事選への出馬を正式に要請した。だが、自民県連はこれを問題視し、那覇市議会の自民党所属議員12人のうち、安慶田(あげだ)光男議長など3人を最も重い除名、9人を離党勧告とする処分を決めた。

 7月には「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」結成大会が開催され、およそ100人が発起人に名前を連ねたという。だが、実際はその時点で県内の市長11人中、名護と那覇を除く9人が「反翁長」であった。つまり、オール沖縄が根拠とする、全市町村が要望した建白書の効力は半減しており、オール沖縄は有名無実化していたのである。

 だが、その事実を隠蔽したまま、オール沖縄を前面に出した報道が繰り返されていった。9月に入ると、「島ぐるみ会議」の度重なる要請を受けて、翁長氏は知事選出馬を表明した。翁長氏は「これ以上の(基地の)押しつけは沖縄にとって限界で、地元の理解を得られない移設案を実現することは事実上不可能だ」と政府と仲井真知事への対抗姿勢を示した。

 11月の知事選で、翁長氏は仲井真氏に10万票差を付けて初当選を果たした。翁長氏の下で、沖縄は県をあげての政府との対立路線に突入していくのである。

 その後、オール沖縄の象徴で、唯一の保守系会派だった新風会が17年の那覇市議選で壊滅的敗北を喫する。また、翁長氏の懐刀だった安慶田氏が口利き疑惑で副知事を辞任するなど、保守層の支持基盤は風前のともしびとなった。

 現在、オール沖縄という言葉をかろうじて使う根拠になっているのが、保守政党出身の一部政治家が支援し、また地元建設・小売り大手、金秀(かねひで)グループの呉屋守将会長やグループが選挙戦で玉城氏を支援しているからだ。「保革共闘」とはいえ、その体制はかなり不完全だ。

 確かに、保革共闘は沖縄県以外でもいくつかの地方選で行われている。福島県でも「反原発」に関しては、保守も革新も同じだが、知事が先頭に立って反原発運動をすることはない。しかし、保革共闘で反政府闘争が実現するのは沖縄だけである。その原因は、中国や北朝鮮による、沖縄への目に見えない反米工作があるともいわれている。

 しかし、現在日本にはスパイ防止法がないため、その関与がたとえ分かったとしても、合法的な場合止める手立てはない。今できることは、その関与を呼び込む沖縄の保革共闘を生み出す土壌の原因を知り、それを克服することだ。
2017年6月、米軍普天間基地と米海兵隊のV-22オスプレイ(早坂洋祐撮影)
2017年6月、米軍普天間基地と米海兵隊のV-22オスプレイ(早坂洋祐撮影)
 ところで、「なぜ、沖縄には広大な米軍基地があるのか?」と聞かれた場合、本土の保守層の多くは「沖縄は安全保障の要であり、米軍の抑止力が必要だから」と答えるだろう。日米安保条約により、在沖米軍が駐留していると認識しがちだ。そして、「米軍駐留に反対する沖縄の人は左派だ」とレッテルを貼ってしまいがちになる。しかし、真実はそう単純ではない。

 沖縄に巨大な米軍基地があるのは、先の大戦末期に米軍が沖縄に上陸し、その直後に本土上陸作戦のための基地の建設を始めたからである。捕虜収容所に入れられた沖縄県民は、戦時中から米軍基地の建設に駆り出されていた。