しかし、興味深いことに、玉城氏の支援団体の古参メンバーが彼の知事としての資質に疑問を呈し、後援会をまとめるのには随分苦労したようだ。事実、県内移設への反対や日米地位協定の改定以外に、玉城氏の具体的な政策は見えてこない。しかし、移設反対は「政策」ではない。あくまで「政治姿勢」でしかないのである。

 確かに、左派系政治家でも、日本政府からの補助金や米軍関係からの直接、間接的な経済貢献が沖縄にもたらされることを認識している人はいる。つい最近まで、移設反対の声が大きくなればなるほど、沖縄にバラ撒かれる予算も多くなった。

 沖縄県や県内自治体、そして沖縄に関わる政治家は皆、政府と沖縄の調整や折り合いを巧みに続けることが求められた。残念ながら、日本政府は沖縄に対する罪悪感や、または無気力のために何十年もの間、基地問題が進まなかった経緯がある。しかし、安倍晋三首相は、4年前の沖縄知事選で与党候補の敗北を受け、ようやく「自動操縦モード」から目覚めたのである。

 沖縄に対する「アメからムチ」のアプローチについて、私は双方の視点から長年にわたって注視してきたが、いずれも痛みを伴うものだった。安倍政権と過去の政権とでは、沖縄に対する基本的認識はかなり異なる。

 沖縄の議員も国政、地方を問わず質が低く、ただ議案に反対することや、利権を要求することだけを自分の仕事と考えている。これでは、沖縄が持つ「真の可能性」を模索することはできない。より持続可能で活力のある関係を日米が作り上げることは難しい。

 沖縄知事選は単なる地方の首長選挙ではない。日本をはじめ、日米関係、インド太平洋の安全保障そのものに影響を与えかねない選挙である。玉城氏は県内人口3位のうるま市出身で、大票田の那覇市も革新市政であり、今回の当選にさほど驚きはない。
2018年9月30日、沖縄県知事選で当選を決め、支援者らと万歳する玉城デニー氏(前列中央)
2018年9月30日、沖縄県知事選で当選を決め、支援者らと万歳する玉城デニー氏(前列中央)
 ただ、沖縄は2022年に本土復帰50年を迎える。仮に佐喜真氏が知事だったら、基地問題のソフトランディングも可能だったかもしれない。それだけに玉城県政のスタートで、日米と沖縄はよほどの想像力と努力を重ねなければ、基地問題解決の道筋をつけることは難しいだろう。

 それだけではない。玉城県政は本土復帰後6度目となる次期「沖縄振興計画」(期間は10年)を政府とともに22年までにまとめる作業にも関わる。中央政府と「対立」か「協調」か、そのスタンスによって内容も大きく変わる。さて、玉城氏はどっちの道を選ぶだろうか。