ところが、翁長氏が亡くなった途端、「オール沖縄」にとっての追い風が吹き始めた。「弔い選挙」のモードに入ったのである。玉城氏は存在の有無を確認できない「翁長氏の遺言」で指名されたが、「翁長氏の遺志を継ぐ」と訴えることで、死して高まった翁長氏のカリスマ性に支えられて、選挙を有利に進めることができたのである。

 二つ目の要因は、玉城デニーという最適な候補者を選んだことだ。「遺言」は確認されていないものの、「後継者指名」はおそらく翁長氏が死の床にあって下した結論だったと思われる。

 唐突に「遺言」が飛び出すまで、玉城氏は有力候補者の名簿に入っていなかったが、選挙にすこぶる強い翁長氏は、これに危機感を覚え、「勝てる候補」として玉城氏を指名する決心をしたに違いない。

 衆院沖縄3区で圧倒的な強さを見せ、県民の間で広く知られる玉城氏であれば、他のどの候補よりも有利に選挙を進められる。米兵を父に持ち、苦労して育った玉城氏なら有権者に訴える「ストーリー」にも事欠かない。

 しかも、自由党幹事長の玉城氏であれば、小沢一郎同党代表が後見人として支えてくれる。小沢氏が背後にいれば、オール沖縄の主勢力である共産党の圧力も抑えられるだろう。翁長氏には以上のような「読み」があったに違いない。

 もともと保守本流だった翁長氏だが、前回の知事選以降「オール沖縄」を率いて政府と対決し、しばしば「革新に変節した」といわれる。だが、翁長氏は保守政治家としての矜恃(きょうじ)を失いたくなかった。
沖縄県知事選をめぐり会談した(左から)自由党の小沢一郎代表と玉城デニー幹事長、立憲民主党の枝野幸男代表=2018年8月28日、国会内(春名中撮影)
沖縄県知事選をめぐり会談した(左から)自由党の小沢一郎代表と玉城デニー幹事長、立憲民主党の枝野幸男代表=2018年8月28日、国会内(春名中撮影)
 小沢氏が支える玉城氏であれば、「極端な革新」にぶれることはないだろう。自民党の基本的な政策に決定的なダメージを与えることもないに違いない。翁長氏は玉城氏を選ぶ際に、そこまで考えたとしてもおかしくない。

 いずれにせよ、玉城氏は翁長氏にとって最適な候補者だったに違いないし、まさに翁長氏の読み通り、選挙を勝ち抜くことができた。