川上和久(国際医療福祉大学教授)

 9月20日、自民党総裁選に勝利した安倍晋三首相は、3期連続で総裁を務めることになった。3期目の任期を全うすれば、第1次内閣を含めた首相としての通算在職日数は約3500日となり、歴代1位の桂太郎の2886日をはるかに上回って、歴代最高となる。

 イタリアの政治思想家、マキャベリはかつて「人の上に立つ者が尊敬を得るには、大事業を行い、前任者とは違う器であるということを、人々に示すことである」と喝破した。桂は首相在職2886日の中で、日露戦争を戦い、関税自主権を回復し、韓国からは批判されているが、日韓条約を結んだ。では、歴代1位の在職日数をうかがう安倍首相の「大事業」とは何になるのか。

 大事業のためのさらなる3年間が与えられたとしたならば、安倍首相がその中で執念を燃やしている大事業は「憲法改正」か「北方領土返還」か、はたまた「日朝国交回復」か。

 長期政権が実現したのは、安倍首相の力だけでなく、周囲の支え、そしてやや意地悪な言い方をすれば、権謀術数があったればこそ、ということに尽きる。安倍首相の、長期政権ならではの「大事業」を期待したいが、本稿ではそれは置いておこう。

 政治リーダーに求められる資質は数多くあるが、その中核となるのが「時代の動きに合わせ、次の時代を見越した改革を行う実行力」「次の世代を育てる育成力」であることは論を俟(ま)たない。実行力も育成力も、政治リーダーの人事でつまびらかにされる。

 10月2日、党役員人事と内閣改造が行われた。残る総裁任期は3年、「実行力」だけでなく、「次の世代を育てる育成力」も問われる人事だ。戦後の長期政権である佐藤栄作政権、中曽根康弘政権、小泉純一郎政権における「次のリーダーの処遇」から、今回の安倍人事を読み解いてみたい。
2018年9月、新潟市内のホテルで開かれた党員集会で気勢を上げる安倍首相
2018年9月、新潟市内のホテルで開かれた党員集会で気勢を上げる安倍首相
 佐藤栄作首相は1964年11月から72年7月まで約7年8カ月首相を務めた。在職は2798日で、現在のところ、桂太郎に次ぐ第2位の日数だ。

 佐藤首相の後を継いだ田中角栄首相は、第1次佐藤内閣のもとで大蔵大臣を務めた後、自民党幹事長を通算約4年務め、71年7月に発足した第3次佐藤改造内閣では通産大臣を務めている。