小林良彰(慶応大学法学部教授)

 今回の安倍内閣改造・自民党役員人事の注目点は3点あった。第一に、従来とは異なり、安倍晋三氏が派閥を軸とした総裁選を戦ったことの影響である。

 安倍氏は2012年総裁選では、苦楽をともにした仲間や思想的に肌合いが合う人を軸に推薦人20人の名簿を作成し、その多くが大臣や副大臣、政務官として入閣した。これに対して、今回の総裁選では党内の派閥からの支持を軸とする選挙戦を繰り広げ、5派閥1グループからの支持を得て、議員票では圧勝した。このため、小泉内閣誕生以前と同様、「各派閥から何人が入るのか」が注目された。

 組閣をみると、安倍氏を支援した細田・麻生・岸田・二階の各派を中心に構成される一方、安倍氏と戦った石破派の斎藤健前農水相は再任されず、石破茂氏も主要な役職には就かなかった。

 また、総裁選において衆参で意見が異なる対応になった竹下派は、竹下亘総務会長が党三役を外れ、竹下派の中で安倍氏を支持した茂木敏充氏が留任し、渡辺博道氏が入閣するなど、全体として総裁選の「論功行賞」が明確になった。特に、各派閥とも入閣待望組が多いことから、内閣の過半数となる12人を初入閣組が占め、派閥の長が派内での求心力を維持することに資する結果となった。

 一方、石破派からは元検事で在米大使館在任中に米国での従軍慰安婦訴訟を勝訴に導いた山下貴司氏を法相に起用した。同氏の入閣については、石破氏を支持した者にも一定の配慮をしたという見方がある一方、石破派の入閣待望組を飛び越えて当選3回ながら一本釣りすることで、石破氏の派内求心力をそぐ考え抜かれた人事という見方もある。
首相官邸への呼び込みの電話に応じた後、抱負を語る自民党の山下貴司衆院議員=2018年10月2日午後、法務省
首相官邸への呼び込みの電話に応じた後、抱負を語る自民党の山下貴司衆院議員=2018年10月2日午後、法務省
 第二の注目点は、安倍氏が最後の任期中に憲法改正を成し遂げるための党内基盤固めである。

 衆議院では自民党+公明党で67%の議席を占め、これに憲法改正に賛成する無所属議員などを加えると、発議に必要な3分の2を超えるが、自民党内にも護憲派がいる。このため、党内を固める必要があることから、党内の総務会長に安倍氏に近い加藤勝信氏を起用し、党憲法改正推進本部長に安倍氏と考えを共有する下村博文氏を起用し、憲法改正に突き進むことが想定される。