安倍氏は2006~07年と12年から現在までで計7年の在任となり、このまま総裁任期満了まで進めば10年に及ぶ長期政権となる。

 過去の長期政権を振り返ると、サンフランシスコ平和条約を結んだ吉田内閣、沖縄返還を行った佐藤内閣、国鉄民営化を断行した中曽根内閣、郵政民営化を実現した小泉内閣とそれぞれに大きな仕事を成し遂げている。安倍氏も歴史の教科書に残る仕事をしたいと思っているはずであり、今回の組閣・党役員人事はそのための布陣を整えたとみることもできる。

 第三の注目点は、後継者である。安倍氏が総裁任期満了までの残り3年間で、自分がやりたいことを全て実現できるわけではない。そうなると、自分の後も自分と同じ方向の政策を継続してもらいたいと願っているはずだ。しかも、特定の政治家を後継指名した途端にレームダック(死に体)が始まるのが永田町の常である。このため、どのように後継者争いで競わせて求心力を維持するのかが注目される。

 今回、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長と茂木経済再生担当相を留任させることになった。過去にも、佐藤栄作氏が「三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘)」を重用することで競わせ、長期政権を維持したことがある。また、竹下登氏も「竹下派七奉行(橋本龍太郎、小渕恵三、梶山静六、羽田孜、奥田敬和、渡部恒三、小沢一郎)」を競わせて、首相辞任後も一定期間、影響力を残した。

 安倍氏も総裁選で安倍支持が遅れた岸田氏を「ポスト安倍」の前提とせず、陰で安倍内閣を支え続けた菅氏にスマートフォンの料金引き下げという政策を主張させたり、茂木氏に日米通商交渉を任せてスポットライトを浴びさせたりするなど、総裁任期満了近くになるまで後継者競争をさせるのではないか。
自民党臨時総務会を終え記念撮影に臨む総裁と新執行部4役(左から)甘利明選対委員長、加藤勝信総務会長、安倍晋三首相、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長=2018年10月2日、東京・永田町(春名中撮影)
自民党臨時総務会を終え記念撮影に臨む総裁と新執行部4役(左から)甘利明選対委員長、加藤勝信総務会長、安倍晋三首相、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長=2018年10月2日、東京・永田町(春名中撮影)
 今後の安倍政権の焦点は、安倍氏が憲法改正の発議をいつ行うのかである。今秋の臨時国会で自民党案を提出する意向であるが、衆参両院での発議にまで持ち込むためにはいくつかのハードルがある。

 まず、公明党の賛同を得るためには、来年の消費税率引き上げに対する食料品などの軽減措置でどこまで譲歩できるのかである。超高齢化に伴う社会保障費の上昇を考えれば、これ以上の引き上げ先送りは難しい。公明党がかねてから主張する軽減措置を受け入れる代わりに、9条2項を削減しない範囲での憲法改正に賛成してもらう合意形成ができるかどうかがハードルの一つである。