2018年10月04日 11:43 公開

米連邦最高裁判事候補の承認手続きが紛糾(ふんきゅう)している問題で、承認の鍵を握るとされる複数の共和党議員が3日、判事候補による性的暴行を告発した教授をトランプ大統領が嘲笑したことを強く非難した。

ドナルド・トランプ米大統領が最高裁判事に指名したブレット・キャバノー高裁判事について、カリフォルニア州の大学で心理学を教えるクリスティーン・ブラジー・フォード教授が、お互いが10代のころに性的暴行を受けたと9月末に上院司法委員会で証言した。キャバノー判事は同じ公聴会で、疑惑をすべて否定した。

強姦されそうになったというフォード教授の証言内容について、トランプ氏は2日の支援者集会で「どうやって家に帰ったの? 覚えてません。どうやって行ったの? 覚えてません。それはどこ? 覚えてません。何年前? わかりません、わかりません、わかりません、わかりません。どの地区? わかりません。家はどこ? わかりません。2階なのか1階なのかどこだったの? わかりません。でもビールは1杯。それしか覚えてません。おかげで、1人の男の人生がボロボロだ」と嘲笑した。会場のトランプ支持者の多くはこれを聞き、歓声をあげながら拍手していた。

フォード教授は実際には上院証言で、被害に遭った民家のあった地区や、部屋が階段を上ったところにあったことなどを話していた。

このトランプ氏の発言について、上院本会議での承認議決の鍵を握るとされる共和党穏健派のジェフ・フレーク、スーザン・コリンズ、リーサ・ムルコウスキ各議員が、「とんでもない」、「ともかく間違っている」などと強い調子で非難した。

本会議の採決前に連邦捜査局(FBI)による疑惑捜査を要求したフレーク上院議員(アリゾナ州選出)は、米NBCの番組で大統領による嘲笑について、「あのような発言をすべき時も場所もない」、「これほどデリケートな話題を政治集会で取り上げるなど、ともかく正しくない。ともかく、正しくない。あんなことしなければ良かったのにと思う」と非難した。

トランプ氏は9月27日の上院司法委公聴会の翌日には記者団を前に、フォード教授を「非常に素晴らしい女性」で「とても信頼性の高い証人」だと述べ、発言した勇気を称えていた。

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メイン州選出のコリンズ議員は3日、記者団に対して「大統領の発言はひたすら間違っていた」と述べた。コリンズ議員も、キャバノー判事の承認に賛成するかどうか態度を明らかにしていない。

ムルコウスキ議員(アラスカ州選出)も同日、トランプ氏の発言は「まったく不適切」で「受け入れられない」と批判した。それが判事承認に対する投票に影響するか記者に質問されると、「あらゆることを考慮している」と答えた。

現在の上院は、51対49の僅差で共和党が多数党。仮に民主党議員が全員、キャバノー判事の承認に反対した場合、共和党から2人が反対に回れば、承認は否決される。50対50の場合は、上院議長のペンス副大統領が投票するため、承認は可決される見通し。このため、共和党としては2人が造反すると、ブッシュ政権の秘書官を務めるなど共和党に近い保守派判事のキャバノー氏を、11月6日の中間選挙前に最高裁に送り込めなくなる。

9月28日から1週間を期限に開始されたFBI捜査は、5日が期限。米報道によると、FBIはこれまでに少なくとも5人に事情を聞いている。そのうち4人は、キャバノー判事が当時の行動を記録して提出したカレンダーに書かれている1982年7月1日の集まりに出席した人物という。

与党・共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、上院本会議は今週中にキャバノー判事の承認を議決しなくてはならないと述べている。

「性的暴行の生存者を嘲笑」

フォード教授の顧問弁護士マイケル・ブロムウィッチ氏は、トランプ大統領の発言を「残酷で卑劣で、心のない攻撃」だと非難した。

「彼女はこれまで怖くて、被害を主張できなかった。そう思うのも、まったく無理もない。ほかの性的暴行の生存者も同じだ」

野党・民主党のチャック・シューマー上院院内総務は3日、トランプ氏が「性的暴行の生存者を真っ向から馬鹿にした」と強い調子で非難した。

一方で、ホワイトハウスの定例記者会見でサラ・サンダース大統領報道官は、トランプ氏がフォード教授の証言をそのまま説明しただけで、承認手続きに影響を与えるとは思わないと述べた。サンダース報道官はさらに、被害者の主張について何か言うと攻撃されるのは間違っていると述べた。

フォード教授が覚えているのは

9月28日に上院司法委で証言した際、フォード教授は自分が被害に遭った民家はワシントン郊外のチェビーチェイス・ベセスダ地区にあったと言明している。

大統領は、教授が襲われた部屋が何階にあったかも覚えていないかのような発言をしたが、フォード教授は公聴会で、階段を上った先にある寝室に押し込まれたと証言していた。

教授は1982年の夏に、この民家の寝室でキャバノー氏にベッドに押し付けられ、服を脱がされそうになったと証言した。さらに、助けを求めて叫ぼうとすると、キャバノー氏に手で口を押さえられたとも話していた。一緒にいたキャバノー氏の友人がベッドに飛び乗った拍子に3人とも床に転げ落ちたため、そのすきにその場を逃れて、家を出たとも述べていた。

さらに教授は、酔った男子2人の楽しげな笑い声を何より覚えていると証言した。

その上で、民家でのパーティーにどうやって到着したのか、どうやって帰宅したのか、民家の正確な位置などの詳細は覚えていないと認めた。

心的外傷(トラウマ)になる出来事を経験した人が、経験の一部は鮮明に覚えていても、他の詳細は思い出せないというのは決して珍しいことではないと、複数の専門家が指摘している。

匿名「元カレ」攻撃に反論

保守系フォックス・ニュースは、フォード教授の元恋人だと主張する匿名男性からの手紙を報道。男性は、暴行被害を名乗り出る際にポリグラフ(うそ発見器)テストを受けて証拠として提出したフォード教授が、ポリグラフの受け方を誰にも教えたことはないと証言したことについて、それは事実と異なり、自分は教授が友人女性に受け方を指南するのを見ていたと書いている。男性はさらに、自分は6年間フォード氏と交際したが、暴行被害について聞いたことがないとも書いている。

これに対してフォード教授の弁護団は、匿名男性の手紙に「友人女性」として名指しされた女性が、そのようなことは一切ないと反論する声明を発表した。

上院司法委の共和党はこれとは別に、キャバノー判事による問題行動を主張する3人目の女性、ジュリー・スウェトニク氏について、元恋人を名乗る男性がスウェトニク氏を攻撃する手紙を公開するという、異例の動きに出た。

(英語記事 Republicans deplore Trump mocking Brett Kavanaugh accuser